君の隣が、いちばん遠い


塾の帰り道、空はすっかり秋の色だった。

帰る途中で空を見上げると、夕焼けのグラデーションが空一面に広がっている。


家に着くと、美帆ちゃんがリビングでソファに寝転びながらテレビを観ていた。


「おかえりー。文化祭の準備、始まった?」

「うん。まだ何をやるか決まってないけど」

「へえ。いいな、楽しそう」


美帆ちゃんは3年生で、学校と進路で忙しそうだった。

わたしも、もうすぐそういう時期がくるんだな……と、少し先の未来を思った。



その夜、スマホの通知が小さく鳴った。


《今日、塾どうだった?》


一ノ瀬くんからのLINEだった。


《普通だったよ。そういえば、白石くんもいた。修学旅行の話になった》

《そっか。なんか言ってた?》

《ううん。ただ日程がズレてるって話しただけ》


数秒後に返ってきたスタンプが、ちょっとかわいくて笑ってしまう。

わたしはスマホを胸に抱えたまま、しばらく天井を見つめていた。

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