君の隣が、いちばん遠い
⑤進むことは、怖くない
六月。
梅雨入りが発表された数日後、湿気を含んだ空気が教室にも広がり、なんとなく、空気が重たい。
模試、面談、提出課題、進路調査──。
三年生の六月は、まるで“本番”のような忙しさで、みんながどこかピリピリしていた。
休み時間に響く笑い声は、二年の頃よりずっと少ない。
いつもは賑やかな紗英ちゃんも、最近は教室の隅で単語帳を黙々とめくっている。
わたしも、同じだった。
自分の志望校をようやく決めたとはいえ、そこからがスタート。
学力はまだまだ届いていなくて、塾でも毎回くたくたになる。
そして、少しずつ、わたしたちのあいだにも“距離”が生まれていた。
「ひより、最近一ノ瀬とあんまり一緒にいなくない?」
ある日、紗英ちゃんが小さな声で訊いてきた。