君の隣が、いちばん遠い
「……ひより、かっこいいな」
「えっ」
「俺、いまちょっとだけ惚れ直してる」
「ちょ、やめてよ……それに、その言葉は久遠先生が言ってくれた言葉なんだからね」
照れ隠しに軽く腕をつついたら、遥くんがくすっと笑って、わたしの手をそっと握った。
あたたかくて、安心する。言葉よりも伝わるものが、そこにあった。
しばらく無言で歩いたあと、わたしはぽつりと切り出した。
「ねえ、遥くん。今度、学校とか図書館とかじゃなくて、一ノ瀬くんの家で一緒に勉強しない?」
「……え?」
「ずっと、言おうか迷ってたんだけど。前に、家でのこと話してたでしょ? お父さんやお母さんとうまくいってないって」
「うん……まあ、まだそこまでは解決してないけど」
「だからこそ。リビングとか、家族の目に入るところで、一緒に勉強してたら……一ノ瀬くんがどれだけちゃんと頑張ってるか、伝わるんじゃないかなって」
彼は、しばらく黙っていた。