君の隣が、いちばん遠い

⑤わたしたちの、次の目標



夏の余韻がまだ制服の袖に残っているような、そんな風が吹いていた。


けれど、校門をくぐった瞬間に、空気がすっと引き締まるのを感じた。

夏休みが終わり、3年生の秋が始まる。


「おはよう、ひより!」


教室に入ると、紗英ちゃんがいつものように笑顔で手を振ってくれた。


「おはよう、紗英ちゃん。……なんか、ちょっと緊張するね」

「うん。始業式っていうより、“受験戦線開幕!”って感じするよね」


そんな冗談めかした言葉に、小さく笑いながらもうなずく。


確かに、夏休みが終わったとたん、クラスの空気はどこか変わった。

指定校推薦やAO入試の面談準備が始まり、志望校や入試形態によって、それぞれの動きがはっきりしてきていた。


黒板の隅に貼られた「推薦希望者は職員室前の掲示を確認」の紙が、じわりと現実味を帯びてくる。


わたしは、推薦入試に挑戦することを決めていた。

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