君の隣が、いちばん遠い


夜、自分の部屋で志望理由書を書き直す。

昼間に久遠先生に指摘された部分を、もう一度自分の言葉で見つめ直す。


「なぜ先生になりたいのか」


それは、勉強を教えることだけじゃない。

誰かの「わからない」を一緒に悩んだり、不安を見つけて、背中を押してあげられるような、そんな存在になりたい。


わたし自身が、そうしてもらってきたから。


久遠先生に。

遥くんに。

家族や、友達に。


だから、今度はわたしが――誰かの力になれる人になりたい。

画面を見つめながら、ゆっくりとキーボードを叩く。


言葉が、自分の中から自然に湧いてきて、少しずつカタチになっていく。






次の日の昼休み、一遥くんが購買でパンを二つ持ってわたしの席にやってきた。


「これ、昨日のお礼」

「えっ、なにかしたっけ?」

「図書室で、勉強教えてくれただろ」

「それ、逆じゃない……?」

「まあ、どっちでもいいって」


言いながら席に腰かけた彼と、並んでパンをかじる。

一見、いつも通りの日常だけど、わたしたちは確実に“受験生”になっていた。

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