君の隣が、いちばん遠い
「……推薦、倍率すごいよな。大丈夫?」
「うん、知ってる。15倍。でも、やるしかないって思ってる」
わたしが答えると、彼は少し笑って「ひよりらしいな」と言った。
「遥くんは……一般で行くんだよね」
「うん。AOも考えたけど、やっぱり実力で通ったって思いたくてさ」
その言葉に、胸の奥がじんとした。
ずっと彼は、黙々と、自分の信じる道を歩いていた。
ブレない意志と、揺れない目標。
そんな遥くんのそばにいると、わたしも負けていられないと思える。
「次は、本番だね」
わたしが小さくつぶやくと、彼はわたしを見て、うなずいた。
「うん。でも、ひよりはもう、ちゃんと“受験生の顔”してる」
「……え?」
「その目。夏の初めと全然ちがうよ」
からかうようなその言い方に、思わず笑ってしまった。
だけど、ほんの少し照れくさくて、でもその言葉が、嬉しかった。