君の隣が、いちばん遠い


「なんかさ、ひよりって感じする。色とか、空気とか」

「どういう意味?」

「落ち着くって意味」


そのひと言に、胸の奥がほんのりあたたかくなる。

どうしてこう、遥くんって、何気ない言葉でさらっと照れさせるのがうまいんだろう。


「ちょっと待ってて。お茶いれるから」


そう言ってキッチンに向かうと、戸棚の奥から、あのマグカップをそっと取り出す。

去年の冬、2周年記念で遥がプレゼントしてくれた、ペアのマグカップ。


わたしのはやさしいピンク。遥くんのは、くすんだネイビー。

色違いで、だけどどこか似た雰囲気のあるマグカップ。


この小さなカップに、お互いの思い出がぎゅっと詰まっている気がして、使うたびに胸がじんわりする。


「はい、どうぞ」


マグをそっとテーブルに置くと、遥くんがうれしそうに微笑んだ。


「ちゃんと、使ってくれてるんだ」

「当たり前じゃん。大事なものだもん」

「……俺も」

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