君の隣が、いちばん遠い
翌朝。
いつもより少し早く目が覚めた。
制服を整えて、家を出る。
通学路の途中で、一ノ瀬くんの姿を見つけた。
少しの間、お互いに気づいていながら、何も言えなかった。
でも──
「……おはよう」
「……おはよう」
それだけの言葉だった。
けれど、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
まっすぐに言えなかった気持ちを、
すこしずつ、すこしずつ。
言葉にできるようになっていく気がした。
ふたりの足音が、朝の道にやさしく響く。
まだ少し距離はあるけれど、
それでも、一歩ずつ、近づいていくように。