君の第二ボタンを見つけた時
第九章:好きなんて言えない。
澪と目が合った瞬間慌てて目を逸らす。足早に教室に戻ろうとする。すると、澪が追いかけ話しかけてくる。
「柚桜りんー!ちょっといい?」
「もうチャイム鳴るよ。」
何か不都合なことを言われる予感しかしなくてつい少し冷たい口調になる。きっと『新谷と何話していたの』とかそういうことだ。きっと新谷と私が話していたところを、澪がいた位置から考えて見ていた。
「そっか!じゃあ後で!」嫌だ。話しかけないで。後で話しかけられる前にどうにか逃げなきゃ。
澪と私は最悪なことに同じ人を好きになった。澪は優しくて美人で仲良くしていたいけれど、新谷のことで口を出されたり邪魔されたくない。
澪と仲良くい続けたい気持ちと、澪を邪険に思う負の感情で頭の中が一杯になる。私も新谷のことが好きだと澪に知られたら、澪には嫌われるだろう。
知られてはいけない。知られないように新谷にアピールするんだ。でも、どうして好きな人にアピールするんだろう。好きと気づいて欲しいわけじゃない。好きだから、好きな人にはアピールするものだと思ってアピールしている気がする。そして、アピールして“好き”に気づかれて相手から告白されて両想いになれる保証があるなら、好きな人にアピールする理屈は分かる。だが、私の場合そんな保証はない。きっと“好き“が相手にバレたら困るけれど、他のライバル達に先を越されたら困る。だから、好きな人にアピールすることはきっと、”私はあの人のことが好きだから手出さないでね“という他のライバル達へのアピールなのかもしれない。
授業が終わり休み時間になり、澪から逃げるように教室から出る。早歩きで歩いていると、パタパタと走る音が聞こえてくる。きっと澪だ。いっそ走って行こうか。
「柚桜!」玲衣奈だった。ホッとして立ち止まる。
「あ、玲衣奈・・・」
「どうしたの?顔険しいよ?次移動教室なのに教科書持ってかなかったでしょ。はい、これ。」
「あ、そうだった・・ありがとう。」
「何かあったの?」玲衣奈が私の顔を覗き込む。
「ん・・新谷のことでさ、同じクラスの澪に、新谷と話しているところ見られたかもしれなくて・・・澪が何か話した気にしていたの。」
「なるほど・・・」
「うん・・だからちょっと逃げてしまっていたの・・」
すると玲衣奈は思っても見なかったことを口にする。
「いいじゃん、放っておけば。」
「えっ?」
「そりゃあ柚桜も好きってことは隠したほうがいいけど、聞かれたら適当に誤魔化してアタックし続ければいいじゃん!じゃないと新谷取られちゃうよ?その子に。」
玲衣奈がそんな言い方をするなんて意外だった。でも、玲衣奈に話してそう言ってもらえてスッキリした。たしかに、新谷のことだから澪の他にもライバルはたくさんいるだろうし、澪のことを気にしている場合ではない。
もう澪のことは気にしないで突っ走ろう。たとえ澪に私も新谷が好きっていうことがバレたとしてもそのまま自分の気持ちに突っ走る。絶対に後悔する恋にしない。
__________________________
そうやってせっかく固く決心したのに、どうしてすぐ決心が揺らいでしまうんだろう。後悔しないって決めたのに。一体何のための決心だったんだろう。後悔しないのは不可能なことなのだろうか。そう思うぐらい、数えきれない後悔を今までの人生でしてきた気がする。
大人になった今も新谷が夢に出てくる時期がある。それはきっと新谷が好きだった時の恋に後悔が残っているからだろう。だから何度も夢に見てしまうのだろう。今頃、新谷はどうしているんだろう。
新谷は少しでも私を想ってくれているだろうか。一瞬でもいいから私のことを思い出していてほしい。新谷に話しかけた時の私の顔、話した内容、新聞係での思い出、同じアイドルグループが好きで意気投合したこと、同じクラスだった時初めての席は私と席が隣だったこと。今更また会えるとは思わないからどうか私を一瞬でもいいから思い出して。忘れないで。ほんの少しでもいいから私を想っていて。会いたいなって一瞬でもいいから思って。
新谷のことを夢に見た後は目覚めが良い。だってとても満たされているから。たかが夢なのに、新谷と話せている自分は誰よりも輝いていて、人生のどんな瞬間よりも輝いていて、幸せで満たされている。そして直後、猛烈な後悔に襲われる。ああ新谷に会いたい____。
__________________________
玲衣奈に相談したあの日以来、私は周りの女子の目を気にしないで新谷にアピールするようになった。相変わらず頻繁に三組に出入りしては新谷の視界に入る位置に立って玲衣奈・紗良・華菜と話すし、毎朝欠かさず新谷に「おはよう!」と話しかけるのが私のミッションになっている。新聞係の活動では、新谷も癖のある字で模造紙に書くのを手伝ってくれているし、距離が近くて緊張して困るのがたまに傷くらいだ。せっかく交換したLINEのメッセージのやり取りは、しつこいと思われないように、初めに送るメッセージは一週間に二回ほどに抑えている。
そして“新谷にアピール作戦”五つ目。もうすぐ新谷のお誕生日だ。十一月五日。そのお誕生日当日に新谷に誕プレを渡すのが重大なミッションだ。学年一モテている新谷はきっといろんな人からもらうだろうから、私が誕プレを渡さなかったら新谷にとって影が薄くなる。そう思うのだ。
誕プレは、週末に玲衣奈・紗良・華菜が誕プレ探しに付き合ってくれることになっている。三人は新谷に恋をしている私に真剣にアドバイスしてくれたり、応援してくれている。その三人の応援に私は応えたい。新谷のお誕生日には少しくらい進展したい。直接プレゼントを渡して、気持ちを伝えるんだ。
週末、玲衣奈・紗良・華菜と一緒に新谷の誕プレを買いに渋谷駅に出かけた。誕プレは実用性のあるスポーツタオルと名前入りのシャープペンシルにした。誕プレを買いに行った後はカラオケに行って恋愛ソングをたくさん歌った。
「大人になってからもこうやって一緒に遊びに行ったりカラオケではしゃいだりしたいなあ。」と華菜が言った。
私も、心の底からそう思う。玲衣奈・華菜・紗良たちとなら大人になってもきっと仲良しでいられると思うし、そうありたいと思う。
「私も!大人になってお仕事で忙しくなってもさ、予定合わせて会ったりしよう!」と宣言する。
「私も。みんなとずっと仲良くしていたい。」と玲衣奈が言う。
「みんなとならずっとマブダチだよー!!」と紗良。
ああ幸せだなあと思う。恋をするのも楽しくて幸せなことだと思うけれど、みんなとの友情は恋以上に楽しくて幸せで大切だ。そのことを忘れてはいけないと思う。恋に夢中になりすぎて、周りが見えなくなってもこの3人はずっとそばにいてくれた。
ついに十一月五日。新谷のお誕生日当日になった。今日はいつも以上にライバルが多いだろう。でも負けない。絶対にプレゼントを渡す。
学校に着き高校二年生の教室がある階まで螺旋階段を登ったところで、ちょうど新谷の姿が見えた。水道の蛇口で水を飲んでいた。チャンスだ。
家から忘れずに持ってきた誕プレをの手提げ部分を握りしめ新谷に駆け寄る。すると、私が新谷の名前を呼ぶのと被せるように、ワンオクターブ高い声で新谷を呼ぶ声がした。
「秋也くん!おはよう!お誕生日おめでとうー!」澪だった。澪はロングのストレートにおろした黒髪を艶やかになびかせ、新谷に駆け寄った。そして澪は私が持っている誕プレの紙袋よりも華やかに見える紙袋を新谷に差し出した。それを驚いた顔で新谷は紙袋と澪を交互に見る。
澪が新谷に誕プレを渡したことはすぐに噂に広まった。新谷が私からのではなく澪からもらった誕プレを持って廊下を歩いていると、新谷の仲良い近藤という男子が寄っていき、それは誰からのだと興奮気味に聞き新谷が答え、近藤がその話を噂に広めた。
「あの澪ちゃんから誕プレもらうなんて羨ましいー!俺ももらいてえー!!」
「澪ちゃん綺麗だし新谷にお似合いだよね。」
「もしかして告白したりしたのかなっ?!」
「新谷、澪ちゃんと付き合ったりして!」
耳を塞ぎたくなる噂話があちこちから聞こえてくる。まだ渡せていない誕プレは、朝は手に持っていたが今はバレないようにスクール鞄にしまっている。
「次の休み時間に渡せばいいよ。」玲衣奈がこそっと言う。たしかに、次の休み時間に渡しに行こう。
次の休み時間、誕プレを制服のセーターの中に隠して三組に持っていく。三組の教室を見渡す。すると、紗良と華菜が駆け寄ってきて、二人の話だと、ひと足さきに澪がやってきて、新谷を呼び出したと言う。慌てて廊下を飛び出し、新谷を探し回る。すると、朝二人が話していた水道の前に澪と一緒にいた。
その姿は同級生達の言う通り、お似合いだった。太陽のように眩しい笑顔に少し日に焼けた顔がかっこいい新谷と、腰までおろしたロングのストレートの黒髪を艶やかになびかせ愛くるしく笑う、男子の憧れのマドンナである見目麗しい澪。勝てない。そう思った。なぜなら二人が話す様子はすごくいい雰囲気で、新谷が私には見せたこともないような笑顔をしていた。新谷の笑顔なんてたくさん話した分たくさん見たことあったはずなのに、澪に見せていた笑顔は私が見たことないものだった____。
言えない。好きなんて言えない。澪にこんな私が勝てるわけがないし、あんないい雰囲気の二人を見て割り込みに行けるほど私は図太くなれない。今のうちに諦めよう。二人が本当に付き合う前に____。
「柚桜りんー!ちょっといい?」
「もうチャイム鳴るよ。」
何か不都合なことを言われる予感しかしなくてつい少し冷たい口調になる。きっと『新谷と何話していたの』とかそういうことだ。きっと新谷と私が話していたところを、澪がいた位置から考えて見ていた。
「そっか!じゃあ後で!」嫌だ。話しかけないで。後で話しかけられる前にどうにか逃げなきゃ。
澪と私は最悪なことに同じ人を好きになった。澪は優しくて美人で仲良くしていたいけれど、新谷のことで口を出されたり邪魔されたくない。
澪と仲良くい続けたい気持ちと、澪を邪険に思う負の感情で頭の中が一杯になる。私も新谷のことが好きだと澪に知られたら、澪には嫌われるだろう。
知られてはいけない。知られないように新谷にアピールするんだ。でも、どうして好きな人にアピールするんだろう。好きと気づいて欲しいわけじゃない。好きだから、好きな人にはアピールするものだと思ってアピールしている気がする。そして、アピールして“好き”に気づかれて相手から告白されて両想いになれる保証があるなら、好きな人にアピールする理屈は分かる。だが、私の場合そんな保証はない。きっと“好き“が相手にバレたら困るけれど、他のライバル達に先を越されたら困る。だから、好きな人にアピールすることはきっと、”私はあの人のことが好きだから手出さないでね“という他のライバル達へのアピールなのかもしれない。
授業が終わり休み時間になり、澪から逃げるように教室から出る。早歩きで歩いていると、パタパタと走る音が聞こえてくる。きっと澪だ。いっそ走って行こうか。
「柚桜!」玲衣奈だった。ホッとして立ち止まる。
「あ、玲衣奈・・・」
「どうしたの?顔険しいよ?次移動教室なのに教科書持ってかなかったでしょ。はい、これ。」
「あ、そうだった・・ありがとう。」
「何かあったの?」玲衣奈が私の顔を覗き込む。
「ん・・新谷のことでさ、同じクラスの澪に、新谷と話しているところ見られたかもしれなくて・・・澪が何か話した気にしていたの。」
「なるほど・・・」
「うん・・だからちょっと逃げてしまっていたの・・」
すると玲衣奈は思っても見なかったことを口にする。
「いいじゃん、放っておけば。」
「えっ?」
「そりゃあ柚桜も好きってことは隠したほうがいいけど、聞かれたら適当に誤魔化してアタックし続ければいいじゃん!じゃないと新谷取られちゃうよ?その子に。」
玲衣奈がそんな言い方をするなんて意外だった。でも、玲衣奈に話してそう言ってもらえてスッキリした。たしかに、新谷のことだから澪の他にもライバルはたくさんいるだろうし、澪のことを気にしている場合ではない。
もう澪のことは気にしないで突っ走ろう。たとえ澪に私も新谷が好きっていうことがバレたとしてもそのまま自分の気持ちに突っ走る。絶対に後悔する恋にしない。
__________________________
そうやってせっかく固く決心したのに、どうしてすぐ決心が揺らいでしまうんだろう。後悔しないって決めたのに。一体何のための決心だったんだろう。後悔しないのは不可能なことなのだろうか。そう思うぐらい、数えきれない後悔を今までの人生でしてきた気がする。
大人になった今も新谷が夢に出てくる時期がある。それはきっと新谷が好きだった時の恋に後悔が残っているからだろう。だから何度も夢に見てしまうのだろう。今頃、新谷はどうしているんだろう。
新谷は少しでも私を想ってくれているだろうか。一瞬でもいいから私のことを思い出していてほしい。新谷に話しかけた時の私の顔、話した内容、新聞係での思い出、同じアイドルグループが好きで意気投合したこと、同じクラスだった時初めての席は私と席が隣だったこと。今更また会えるとは思わないからどうか私を一瞬でもいいから思い出して。忘れないで。ほんの少しでもいいから私を想っていて。会いたいなって一瞬でもいいから思って。
新谷のことを夢に見た後は目覚めが良い。だってとても満たされているから。たかが夢なのに、新谷と話せている自分は誰よりも輝いていて、人生のどんな瞬間よりも輝いていて、幸せで満たされている。そして直後、猛烈な後悔に襲われる。ああ新谷に会いたい____。
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玲衣奈に相談したあの日以来、私は周りの女子の目を気にしないで新谷にアピールするようになった。相変わらず頻繁に三組に出入りしては新谷の視界に入る位置に立って玲衣奈・紗良・華菜と話すし、毎朝欠かさず新谷に「おはよう!」と話しかけるのが私のミッションになっている。新聞係の活動では、新谷も癖のある字で模造紙に書くのを手伝ってくれているし、距離が近くて緊張して困るのがたまに傷くらいだ。せっかく交換したLINEのメッセージのやり取りは、しつこいと思われないように、初めに送るメッセージは一週間に二回ほどに抑えている。
そして“新谷にアピール作戦”五つ目。もうすぐ新谷のお誕生日だ。十一月五日。そのお誕生日当日に新谷に誕プレを渡すのが重大なミッションだ。学年一モテている新谷はきっといろんな人からもらうだろうから、私が誕プレを渡さなかったら新谷にとって影が薄くなる。そう思うのだ。
誕プレは、週末に玲衣奈・紗良・華菜が誕プレ探しに付き合ってくれることになっている。三人は新谷に恋をしている私に真剣にアドバイスしてくれたり、応援してくれている。その三人の応援に私は応えたい。新谷のお誕生日には少しくらい進展したい。直接プレゼントを渡して、気持ちを伝えるんだ。
週末、玲衣奈・紗良・華菜と一緒に新谷の誕プレを買いに渋谷駅に出かけた。誕プレは実用性のあるスポーツタオルと名前入りのシャープペンシルにした。誕プレを買いに行った後はカラオケに行って恋愛ソングをたくさん歌った。
「大人になってからもこうやって一緒に遊びに行ったりカラオケではしゃいだりしたいなあ。」と華菜が言った。
私も、心の底からそう思う。玲衣奈・華菜・紗良たちとなら大人になってもきっと仲良しでいられると思うし、そうありたいと思う。
「私も!大人になってお仕事で忙しくなってもさ、予定合わせて会ったりしよう!」と宣言する。
「私も。みんなとずっと仲良くしていたい。」と玲衣奈が言う。
「みんなとならずっとマブダチだよー!!」と紗良。
ああ幸せだなあと思う。恋をするのも楽しくて幸せなことだと思うけれど、みんなとの友情は恋以上に楽しくて幸せで大切だ。そのことを忘れてはいけないと思う。恋に夢中になりすぎて、周りが見えなくなってもこの3人はずっとそばにいてくれた。
ついに十一月五日。新谷のお誕生日当日になった。今日はいつも以上にライバルが多いだろう。でも負けない。絶対にプレゼントを渡す。
学校に着き高校二年生の教室がある階まで螺旋階段を登ったところで、ちょうど新谷の姿が見えた。水道の蛇口で水を飲んでいた。チャンスだ。
家から忘れずに持ってきた誕プレをの手提げ部分を握りしめ新谷に駆け寄る。すると、私が新谷の名前を呼ぶのと被せるように、ワンオクターブ高い声で新谷を呼ぶ声がした。
「秋也くん!おはよう!お誕生日おめでとうー!」澪だった。澪はロングのストレートにおろした黒髪を艶やかになびかせ、新谷に駆け寄った。そして澪は私が持っている誕プレの紙袋よりも華やかに見える紙袋を新谷に差し出した。それを驚いた顔で新谷は紙袋と澪を交互に見る。
澪が新谷に誕プレを渡したことはすぐに噂に広まった。新谷が私からのではなく澪からもらった誕プレを持って廊下を歩いていると、新谷の仲良い近藤という男子が寄っていき、それは誰からのだと興奮気味に聞き新谷が答え、近藤がその話を噂に広めた。
「あの澪ちゃんから誕プレもらうなんて羨ましいー!俺ももらいてえー!!」
「澪ちゃん綺麗だし新谷にお似合いだよね。」
「もしかして告白したりしたのかなっ?!」
「新谷、澪ちゃんと付き合ったりして!」
耳を塞ぎたくなる噂話があちこちから聞こえてくる。まだ渡せていない誕プレは、朝は手に持っていたが今はバレないようにスクール鞄にしまっている。
「次の休み時間に渡せばいいよ。」玲衣奈がこそっと言う。たしかに、次の休み時間に渡しに行こう。
次の休み時間、誕プレを制服のセーターの中に隠して三組に持っていく。三組の教室を見渡す。すると、紗良と華菜が駆け寄ってきて、二人の話だと、ひと足さきに澪がやってきて、新谷を呼び出したと言う。慌てて廊下を飛び出し、新谷を探し回る。すると、朝二人が話していた水道の前に澪と一緒にいた。
その姿は同級生達の言う通り、お似合いだった。太陽のように眩しい笑顔に少し日に焼けた顔がかっこいい新谷と、腰までおろしたロングのストレートの黒髪を艶やかになびかせ愛くるしく笑う、男子の憧れのマドンナである見目麗しい澪。勝てない。そう思った。なぜなら二人が話す様子はすごくいい雰囲気で、新谷が私には見せたこともないような笑顔をしていた。新谷の笑顔なんてたくさん話した分たくさん見たことあったはずなのに、澪に見せていた笑顔は私が見たことないものだった____。
言えない。好きなんて言えない。澪にこんな私が勝てるわけがないし、あんないい雰囲気の二人を見て割り込みに行けるほど私は図太くなれない。今のうちに諦めよう。二人が本当に付き合う前に____。