君のとなりで
海沿いに建つ一軒家。大きな窓からは水平線まで広がる海が見え、風が通るたびに潮の香りがふわりと漂う。季節は秋。まだ日差しは柔らかく、空気も涼やかだった。
真衣は、車の助手席で静かに息をついた。手には、母の形見の小さなブローチ。
「あなたのお母さんが昔よく遊びに来てたのよ。あの人、ここで見る海が好きだったのよ」
茉里おばさんの声が車内に穏やかに響く。
…ママが好きだった海か…
助手席に座る真衣は、じっとその海を見つめていた。
「着いたわよ、真衣。ここがあなたの新しい家よ」
運転席から茉里が優しく声をかける。真衣は顔を上げ、目の前の家を見た。
白い外壁に、手入れの行き届いた庭。そして、海がすぐそこに広がっている。映画の中でしか見たことのないような家だった。
玄関の扉が開かれると、広々としたリビングに暖炉があり、奥のテラスからは海が見えた。
「礼央、乃亜!真衣ちゃんが着いたわよ!」
その声に反応して、一人の少年が階段を駆け下りてきた。
「真衣ちゃん!やっと来たね!」
明るい笑顔。やや癖のあるブロンドの髪に、澄んだ瞳。
「僕、乃亜。よろしく!」
「……こんにちは、乃亜くん」
「乃亜くんなんてかたいよ!乃亜でいいよ!」
真衣は思わずくすっと笑ってしまった。
「うん……乃亜」
茉里おばさんが微笑む。
「乃亜はあなたのひとつ年下。でもとっても頼れるのよ」
そのとき、2階からもう一人、ゆっくりと男の子が降りてきた。
長身で、肩幅が広く、静かな佇まい。黒髪に近いダークブラウンの髪が額にかかっていて、手には読みかけの洋書を持っていた。
無言のまま階段を降りてきた彼は、真衣と視線が合った瞬間、ほんの一瞬だけ目を細めた。
「礼央、一つ上のお兄ちゃん。無口だけど、やさしい子なの」
「……よろしく」
短い挨拶だけを残し、礼央は真衣のキャリーバッグを持ち上げて階段を上っていった。
「……あっ、自分で――」
「いいから」
真衣はその背中を見つめながら、小さくうなずいた。
乃亜が小声で囁く。
「兄さんね、クールだけど怖くないよ。あれで、ちゃんと気にしてくれてるんだ」
真衣は、車の助手席で静かに息をついた。手には、母の形見の小さなブローチ。
「あなたのお母さんが昔よく遊びに来てたのよ。あの人、ここで見る海が好きだったのよ」
茉里おばさんの声が車内に穏やかに響く。
…ママが好きだった海か…
助手席に座る真衣は、じっとその海を見つめていた。
「着いたわよ、真衣。ここがあなたの新しい家よ」
運転席から茉里が優しく声をかける。真衣は顔を上げ、目の前の家を見た。
白い外壁に、手入れの行き届いた庭。そして、海がすぐそこに広がっている。映画の中でしか見たことのないような家だった。
玄関の扉が開かれると、広々としたリビングに暖炉があり、奥のテラスからは海が見えた。
「礼央、乃亜!真衣ちゃんが着いたわよ!」
その声に反応して、一人の少年が階段を駆け下りてきた。
「真衣ちゃん!やっと来たね!」
明るい笑顔。やや癖のあるブロンドの髪に、澄んだ瞳。
「僕、乃亜。よろしく!」
「……こんにちは、乃亜くん」
「乃亜くんなんてかたいよ!乃亜でいいよ!」
真衣は思わずくすっと笑ってしまった。
「うん……乃亜」
茉里おばさんが微笑む。
「乃亜はあなたのひとつ年下。でもとっても頼れるのよ」
そのとき、2階からもう一人、ゆっくりと男の子が降りてきた。
長身で、肩幅が広く、静かな佇まい。黒髪に近いダークブラウンの髪が額にかかっていて、手には読みかけの洋書を持っていた。
無言のまま階段を降りてきた彼は、真衣と視線が合った瞬間、ほんの一瞬だけ目を細めた。
「礼央、一つ上のお兄ちゃん。無口だけど、やさしい子なの」
「……よろしく」
短い挨拶だけを残し、礼央は真衣のキャリーバッグを持ち上げて階段を上っていった。
「……あっ、自分で――」
「いいから」
真衣はその背中を見つめながら、小さくうなずいた。
乃亜が小声で囁く。
「兄さんね、クールだけど怖くないよ。あれで、ちゃんと気にしてくれてるんだ」