あやかしと四神〜闇を祓って〜
鈴のついた耳飾りは音を立てていない。怪異はおらず、平和で穏やかな日常の証だ。

（こんな平和が続いていればいいな……）

そう心の中で呟いた朱雀だったが、それは青龍の一言でかき消された。

「そういえば、ここに来る前に街の人たちが噂をしていたな」

「噂？」

「ここ数日、多くの人が行方不明になっているらしい」

「えっ？そんなことが起きてるの？」

朱雀は驚く。何も知らなかった。しかし、玄武や白虎たちもその噂を知っていた様子だ。

「痕跡が何もなくて行方を追おうにも追えないんだよな」

「最近は奇妙なことが多いと思う。ほら、先日の件だってそうだろう？」

玄武が朱雀に向けてかけた言葉に、彼の中で苦い思い出が蘇る。異世界に飛ばされた挙句、妖使いだと勘違いをされて疑われてしまい監視される羽目になってしまったのだ。あれほど苦い経験をしたことは一度もない。

「玄武、その話はやめてくれない？」

朱雀が複雑な感情のあまり俯きながら言うと、颯真も隣で「そうですよ！」と大きく頷いた。
< 8 / 34 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop