氷壁エリートの夜の顔
「結城さん、A社の件ですが、先方からスケジュールの再調整を求められています。返答期限は来週中とのことで──」

「……資料に記載があります」

 オフィス用の笑顔を浮かべた私を、ぴしゃりとシャットダウン、強制ログアウト。
 声は落ち着いているけれど、こっちは完全にドアを閉められた気分だ。

 私はこっそり唇を噛み、小さく深呼吸して──オフィス用笑顔を、再起動する。

「……念のため、口頭でもお伝えしました。人間ですから、確認は重ねておくに越したことはありません」

 本当は、「バックグラウンドで動作中なんですか? 表情の更新、止まってますけど」くらいは言ってやりたかった。けれど、それはさすがに飲み込んだ。

 それでも、声のトーンが少しだけ強くなってしまったのは、自分でもわかっていた。
 彼はちらりとこちらを見たが、それ以上は何も言わない。

 会話は、それで終了した。
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