その声を聞かせて
ステージの向こうからはずっと悲鳴のような歓声がやまない。

そして歌い出すと驚く事にシーンと静まり返った。

それは語る様に、優しくて、甘くて、切なくて…
そんな凌の歌声が会場を包む。

私の脳裏にはあの雨の日の情景が鮮明に思い出され、凌が歌う横顔を見て目に涙が浮かんだ。

あの日、凌は俯く私に傘を差して入れてくれた。

あの時凌は…

こんな風に…

今すぐ抱きついてしまいたい衝動をなんとか抑える。

この曲が終われば真っ直ぐ裏手に走ってワゴンに乗り会場を後にする事になってる。

それまでの我慢。
私は祈る様に手を合わせて指輪を付けている手を握りしめる。

最後の最後まで丁寧に歌い上げた凌は直ぐに耳からイヤホンを外し、曲も終わらぬままこちらに走ってきた。

そして私の手を取り走りだす。

私たちを隠す様にスタッフが囲う中ワゴンに乗り込んだ。

「凌っ…」

感極まった状態で名前を呼べばギューっと抱きしめられる。

運転席とこちらの席の間には仕切りが付けられていて、見えなくなっている。

するとすぐに車が動き出した。
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