サルビアの育てかた
 突然、大きな身体が私の全身を強い力で覆ってきた。何が起こっているのか。訳も分からず混乱していると、座席が後ろに倒され完全に身動きが取れなくなる。

 えっ、何。どういうこと……?

 ついさっきまで、一緒に夜景を楽しんでいたはずなのに。今、私の視界は筋肉質の大きな身体で遮られている。
 目の前には、素顔を見せたライクさんの姿。細い目で私をじっと見下ろしている。その表情が、ものすごく怖く感じた。

「あ……あの、ライクさん……?」

 震える声をなんとか絞り出し、ライクさんの名前を呼んだ。
 だけど、私の両腕を掴んでなぜか放してくれない。

「ごめん、我慢できねえ」
「え……?」

 どういうことか、理解できなかった。ううん、違う。理解したくなかっただけ。
 体格差がありすぎる。抵抗しようとしても全然敵わない。

 ──何するの……? やめて。やめて、触らないで!

 そう叫びたかったのに、急に怖くなって声が出せなくなった。
 ライクさんはもう片方の手で私の服に触れ、荒々しく脱がしていく。

 ──い、嫌だっ。嫌だ! 見ないで! やめてっ……!

 鎖骨下にある、あのみすぼらしいシミが露出してしまう。

 私の身体を触る冷たいその手は、決して離れることはない。ライクさんは、息を荒くして私の胸の上に顔を埋めてきた。その瞬間、全身にものすごい悪寒が走る。
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