サルビアの育てかた
 でも思い返してみると──たしかにレイは、復帰したての頃は雑誌やネットで小さいながらもニュースとして取り上げられていたな。俺もプロの大会に出て良い成績を収めたときなどは、軽くインタビューを受けたことはある。
 いや。とは言っても、マスコミに目をつけられるほど知名度があるわけではないと思う。

「わたしも中央の席で見ていたけど……すぐ近くに、明らかにマスコミ関係の男がいたの。あなたたちの最後のダンスを見た際に、その人が言っていたのよ。『これから面白いネタが掴めるかもしれないな』って……。本番が終わってからもしばらく見張ってたんだけどね、どうやらその人、大手に勤める芸能記者みたいよ」

 フレアはこの上ないほど深刻そうな表情だった。
 それでも俺は首を横に振る。

「そんな、大袈裟だな。大丈夫だろ? 俺とレイはそこまで有名人でもないし」
「もう。何が大丈夫なの!」

 キッと睨みつけてくるフレアの迫力に、俺は思わず後退りする。

「あなたたちの関係は普通じゃないのよ! もしマスコミにバレて、ネタとして世間に晒されたりしたらどうするの? そんな形で本当のことをレイが知ってしまったら……きっと物凄く傷つくわ」

 俯くフレアのその言葉に、俺はハッとする。

「それに、ご両親の想いもどうなるの。あの子はまだ十六歳よね。事実を伝えるまでに、どうにか世間に知られないように気をつけないと」

 俺は固唾を飲み込んだ。
 ──たしかに、フレアの言うとおりだ。

 俺とレイは表舞台に立つ人間であり、少なからず注目する人たちがいる。純粋に応援してくれるファンだけならいい。だけどそれだけじゃない。何かあれば人の噂を嗅ぎつけ、それを特定すると世にばら撒いて商売をする人間もいるんだ。
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