サルビアの育てかた
 間もなく俺たちの前には、大きな壁が立ちはだかろうとしている。何とかしてその壁から逃げ切りたい。それが一番なのはたしかだ。
 だが、もしもぶち当たってしまった時、俺はレイが壊れてしまわないように守らなければならない。

 俺はシスターの目を真っ直ぐに見て大きく頷いた。

「ありがとうございます、シスター。大事なことを思い出しました」

 強く俺がそう答えると、シスターは目を細める。

「何があっても、レイのそばにいて支えようと思います」
「ヒルスなら、きっとあの子の笑顔を守れるはずです。ただ……最後まで諦めないでくださいね」

 柔らかい声で、シスターは言う。

「レイちゃんに辛い過去を思い出させないのが最善です。それだけは忘れないで」
「はい、もちろんです」

 結局、解決策を見つけられたわけではない。でもこうしてシスターと話をしたことで俺の気持ちはずいぶんと軽くなっていた。
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