サルビアの育てかた
 ロイは俺の顔を見つめ、眉を八の字にしていた。

「分かっています。ヒルス先生の仰るとおりかもしれません」
「そうだろ?」
「はい。ただ、ボクがここを自分の家と思ってしまったら……辛くなります」
「どういうことだ?」

 ロイはしんみりとした口調で続ける。

「ここにいる子たちは入れ替えが激しいんです。新しい誰かが来たと思えば、里親に引き取られて出ていく子がいる。一年で食卓を囲むメンバーは大きく変わるんですよ。仲良くしていた子とも、喧嘩ばかりしていたあいつとも。いつかは別れが来る。もちろん、ずっとぼくを見守ってきてくれたシスターとも……来年でお別れです」

 ロイの目は少し涙目になっていた。声までも微かに震え始める。

「だからシスターやみんなのことを家族だと認めてしまったら、いつか訪れる別れが辛くなる。おかしいですよね? 家族なのに、別れが来るなんて」

 暗い声で語るロイの表情を見て、俺はハッとした。

 ──彼は、とっくの昔に『家族』を見つけていたんだ。
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