サルビアの育てかた
俺は小さく首を横に振った。
「別にここを出たって、シスターに会えなくなるわけじゃないだろ?」
「えっ」
「知っているか? シスターはレイのもう一人の母親でもあるんだぞ」
「それは、どういうことです?」
「シスターは彼女の名付け親だ。レイが俺たちの家族として引き取られてからも、何年も想い続けてくれていた。それで、つい最近十七年ぶりに再会したんだ。レイはシスターのことを覚えていないはずなのに、とても懐かしそうな顔をしていた。シスターも本当に嬉しそうだったよ」
ロイの表情が和らいでいく。
俺はそんな彼に、微笑みを絶やすことなく語り続けた。
「ロイがあと一年でここを出ていかなきゃならないとしても、自立した後も会えばいい。離れて暮らしていても、心の距離だけは近いはずだ」
俺がそこまで話すと、ロイは笑みを浮かべた。目尻が少しばかり赤くなっている。
「さすが、ヒルス先生ですね。ダンス以外でも大切なことを教えてくださるなんて」
「いや、まあ。俺も色々あったからな」
「そうですよね。先生もレイさんも、たくさん辛い想いをして来たんですよね。先生のお話はとても心に響きます」
そう言われると、俺は小恥ずかしい気持ちになってしまう。それでも、彼が明るい表情に戻って安心した。
「そろそろボクも戻ります。夕食の途中でしたので」
「ああ。今頃シスターがみんなをなだめている頃かな」
「なだめるなんてとんでもないです。怒号が飛び交っていると思いますよ」
「シスターが、怒鳴るのかっ?」
「そうですよ。喧嘩して、誰かが誰かに手を出せばシスターは本気で怒りますから。暴力とか、危険なことをするのは許せないと」
──暴力は許せない。ああ、シスターらしいな。それは彼女の優しさの表れだと俺は思った。
「ごめんな、ロイ。話し込んだな」
「いいえ。いいんですよ」
「また明日、スタジオでな」
「はい。先生、お気をつけて」
「別にここを出たって、シスターに会えなくなるわけじゃないだろ?」
「えっ」
「知っているか? シスターはレイのもう一人の母親でもあるんだぞ」
「それは、どういうことです?」
「シスターは彼女の名付け親だ。レイが俺たちの家族として引き取られてからも、何年も想い続けてくれていた。それで、つい最近十七年ぶりに再会したんだ。レイはシスターのことを覚えていないはずなのに、とても懐かしそうな顔をしていた。シスターも本当に嬉しそうだったよ」
ロイの表情が和らいでいく。
俺はそんな彼に、微笑みを絶やすことなく語り続けた。
「ロイがあと一年でここを出ていかなきゃならないとしても、自立した後も会えばいい。離れて暮らしていても、心の距離だけは近いはずだ」
俺がそこまで話すと、ロイは笑みを浮かべた。目尻が少しばかり赤くなっている。
「さすが、ヒルス先生ですね。ダンス以外でも大切なことを教えてくださるなんて」
「いや、まあ。俺も色々あったからな」
「そうですよね。先生もレイさんも、たくさん辛い想いをして来たんですよね。先生のお話はとても心に響きます」
そう言われると、俺は小恥ずかしい気持ちになってしまう。それでも、彼が明るい表情に戻って安心した。
「そろそろボクも戻ります。夕食の途中でしたので」
「ああ。今頃シスターがみんなをなだめている頃かな」
「なだめるなんてとんでもないです。怒号が飛び交っていると思いますよ」
「シスターが、怒鳴るのかっ?」
「そうですよ。喧嘩して、誰かが誰かに手を出せばシスターは本気で怒りますから。暴力とか、危険なことをするのは許せないと」
──暴力は許せない。ああ、シスターらしいな。それは彼女の優しさの表れだと俺は思った。
「ごめんな、ロイ。話し込んだな」
「いいえ。いいんですよ」
「また明日、スタジオでな」
「はい。先生、お気をつけて」