サルビアの育てかた


 モラレスさんの新曲のPV収録は一日掛けて行われた。朝六時からスタジオに集まり、終わった頃には深夜零時を過ぎていた。
 正直かなり疲れを感じていたが、収録が無事に終わった後のレイの顔を見るとこの上なく晴れやかだった。彼女の満足感が伝わってきて、俺も嬉しくなる。

「お疲れ様、レイちゃん、ヒルス君。あなたたちのおかげで最高の一日になったわ」

 収録中は怒号に近い口調でスタッフたちに指示を出していたモラレスさんだが、終わった後は人が変わったように優しくなるギャップに、俺はなんとも言えない気持ちになる。

「モラレスさん、今後ともレイをよろしくお願いします」

 俺の言葉に大きく頷くと、モラレスさんは突然、俺とレイを両腕で抱き寄せてきた。

「あなたたちはこれからも輝き続ける素敵なダンサーよ。アタシが認めているんだから間違いない。どんなに辛いことがあっても負けないで」

 モラレスさんの話し声は不思議なほど安らいでいた。

「ありがとうございます、モラレスさん。私には彼がついているので、大丈夫です」

 レイがそう言うと、モラレスさんはニコッと微笑み、大きく頷いた。
 何の躊躇もなく言うレイのその言葉に、俺の感情はまたもや高まるんだ。
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