サルビアの育てかた
 私が必死に溢れ出そうになるものを抑えていると、突然控え室のドアをノックする音が響いた。

「レイ、入っても大丈夫か」

 陽気な声がドアの向こうで聞こえてくる。この声は──

「ジェイク叔父さん。どうぞ」

 私が答えるとドアはすぐに開き、たちまち部屋の中が賑やかになる。

「準備万端だな! レイ、綺麗じゃないか。こいつには勿体ないくらいだ!」

 声を上げて笑いながら、叔父は楽しそうにそう話す。
 叔父に腕を掴まれながら、顔を逸らして部屋に入ってくる人がもう一人。顔を真っ赤にしていて、彼は何となく照れているみたい。

 可愛いなあ。白い衣装姿でいつもの何倍も格好良いはずなのに。

「ほら、新郎! レイを褒めてやれよ」
「う、うん。いや、もう何回も言ったよ」
「何を言ったんだ。話してみろ!」
「どうして叔父さんの前でいちいち話さなきゃいけないんだ。勘弁してくれ……」

 叔父さんにからかわれて、大変だね。私は密かにクスッと笑う。
 その隣でシスターは変わらず落ち着いた声で私たちに言った。

「まだ挙式まで時間があります。二人で外の空気を吸ってきなさい」
「二人きりでイチャイチャさせる気かっ!」と騒ぐ叔父をなだめながら、シスターはさり気なく私と彼に「大丈夫ですよ。行ってきて」と声を掛けてくれる。
 すると彼はシスターにコクリと頷き、私の手を引いて教会の裏庭までそそくさと出ていった。
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