暇な治療院
 「こんにちはーーー。」 (誰か来た。)
「はいはい。」 玄関に出てみると、、、。
 「読売新聞ですけど、、、。」 「は? 新聞が何の用?」
「お兄さん 一部取ってくれんかね?」 「俺は見えないから読めないよ。」
「そこをなんとか、、、。」 「とか言われても困るんだけど、、、。」
 「うちにさあ奨学生が居るんだ。 ポイント稼ぎのためにも頼むよ。」
おじさんは必死です。 「なあなあ、洗剤もあげるからさあ。」
「でも無理だよ。」 「いいのいいの。 取ってくれたらそれでいいんだ。」
 おじさんは洗剤を四つも持ってきた。 「こんなに要らないってば。」
「いいんだいいんだ。 あんたの名前はこっちで書いとくからよろしく頼んだよ。 ありがとね。」
おじさんは拒否するのも聞かずに行ってしまった。

 「あんちきしょう、、、。」 おじさんが帰った後、新聞社に電話を、、、。
「断らないあんたが悪いんだよ。 何で断らないの?」 「断るもくそも無かったよ。 勝手に書いて行っちゃったんだから。」
「しょうがないなあ。 洗剤は使っていいから今後はちゃんと断るように。」
(何で俺が怒られなきゃいけないんだよ? 馬鹿みたい。)
 ほんとにね、新聞配達店も取ってもらわないと金にならないから必死なのは分かるけどこれじゃなあ、、、。
「おー、開いてる。 やってもらおうかな。」 そこへいつも機嫌がいいおばちゃんがやってきた。
 「何だいこれ?」 「新聞屋が置いてったの。」 「頼みに来たのか?」
「ひつこいおっさんだったから新聞屋に電話した。」 「最近はみんな取らないからねえ。」
「けどさあ見えないからダメだって言っても聞かないんだよ。」 「何処だったの?」
「読売だよ。 読売。」 「ああ、あそこか。」
 おばちゃんは洗剤を見ながらベッドに横になった。 「洗剤あげるよ。」
「いいのか?」 「だって四つも使わないからさあ、、、。」
「そうだねえ。 あんた一人だもんねえ。 二つ貰ってやるよ。」

 このおばさん、スーパーでレジ打ちをやってるんだ。 夕方に行くといつも居るんだよね。
 「おー、今日も来たのか。」なんて言いながらやってくれるんだけど、「刺身美味そうだなあ。 頂戴よ。」なんて平気で言ってくる。
慣れちゃうとそうなんだよなあ。 隣のおばさんがいつもクスクス笑ってんだ。
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