君を大人の果実とよぶ。
消化器手術、特に胃などの上部消化管手術は、
開腹も内視鏡もロボット手術も、
新人が手術に慣れるためにつきやすい手術とされている。
いわゆるレベル1の手術だった。
特にうちの場合は、執刀のメインが牧であり、
細かい拘りや厳しさもなく、
かと言って急な大出血のリスクも少ないため、
新人がつきやすいのだ。
アメリカから戻ってきてしばらくは、
それこそ京子が牧担当のようについていた。
だが、病棟からの移動者、つまりは手術室の新人が
移動してきてからは、話が変わってきていた。
変化の波は、徐々に大きく、そしてゆっくりと
京子に押し寄せてきた。
「まず…」
「まず?」
そのまま話を進めようとすると、
「そんなに溜まってるんですか」
と、渚がフライドポテトを一つつまむ。
恵や澪菜が総合外科部門に移動してきて早1カ月。
京子は一番の後輩であり、親友でもある渚を
家の近くの居酒屋に呼び出した。
「話したいことがたくさんあるの…だめ?」
「だめじゃないですよ?私もそうだし」
「濃い1カ月だった、本当に」
「ですね」
渚もしみじみと頷く。
平日だというのに、店内は賑わっていた。
それこそ、ここにいるサラリーマンはみんな
自分たちと同じ悩みを抱えているのでは
ないかとさえ思える。
京子はハイボール片手に前のめりになった。