君を大人の果実とよぶ。
街から少し離れた高台にそびえ立つ、
東都南大学病院。
『総合外科部門』のスタッフステーションに、
3時間の手術を終えた京子は戻ってきた。
「お疲れー」
同じく午前中の手術を終えた看護師が、
受付のそばにあるデスク回りで屯いでいた。
京子が洗面台で手を洗っていると、
ひょこっと見えるもじゃもじゃ頭。
そして…
「きょんちゃーん」
「…はぁ、なんですか?」
「一件目お疲れさまーの、
ぎゅーしてもらいに来たぞいっ」
「……」
そのままスルーして手を拭いて、
空いている椅子に腰かける。
そしてなんとなく電子カルテを開くと、
視界に入ろうとしてくるうざい存在がチラついた。
「ねぇねぇ、無視するなんてさみしいー」
「あーもう!うっざい!
みんなの邪魔なんであっち行ってください」
シッシッと手を振るも、
椅子の背を抱えるようにして座る男は
相変わらず嬉しそうに尻尾を振る。
「やっと目合ったー♡」
色付き眼鏡の向こうでにこーっと笑う、
紺色のスクラブ姿の消化器外科医。
特徴は、天然なのか未だに謎の茶色いパーマ、
言わずもがなの色付き眼鏡に、
無駄に細長い手足と、紅色の聴診器…
そして、決して折れることのない図太い精神と、
「昨日初めて指名した女の子より、
やっぱり可愛いな~きょんちゃんは」
この病院一の大の女好き。