君を大人の果実とよぶ。
掴まれた腕を、咄嗟に振り払う。
京子は一瞬心が痛んだが、
それでも振り返らなかった。
「本当にきょんちゃんと話したいだけなんだよ」
「いい迷惑です。
いつもいつも目の前でいちゃいちゃされて…
私のことなんだと思ってるんですか!」
「そんな…」
「いい大人でしょ!?他人に迷惑かけないで、
そういうことは他所でやってください」
「ごめん、きょんちゃ…」
「気安く呼ばないで!」
「ッ…!」
冷たい廊下に、京子の声が響く。
「限界です。
今度話しかけてきたら、私仕事辞めますから」
「……」
しまった、と心の中で思わず呟いた。
仕事を辞めるまでは言い過ぎたかもしれない。
だが、今更止められない。
言葉を言い換えるか迷ったところで、
牧が独り言のように言った。
「…工藤がいいのかい?」
「…はい?」
予想外の言葉に、京子は牧に向き直った。
この人、こんなに…?
見上げているはずの牧が、
なぜか一段と、小さく見える。