君を大人の果実とよぶ。
部署が移動すれば、一から学ぶことも多い。
ましてや手術室は、病棟と業務内容が全く異なる。
そのため、たとえ看護師歴が長く、
前の部署で大ベテランだったとしても、
ここに来てはみんな新人同様の立場に戻ってしまう。
京子は後輩指導が得意ではなかった。
ましてや、看護師としては大先輩のはずの人が、
手術室内では後輩となって、京子が教える。
そんな状況が苦手なため、
京子はいつも移動者とは
深くかかわらないようにしている。
本当は良くない…というか、
ダメなことだな、とは思うんだけどね…。
師長の話が長すぎるあまり、
既に何件か手術が始まりはじめた。
受付にある大画面でそれを確認した京子は、
しれっとその場を離れた。
「午後の準備でもするかー」
ポツリと一言呟いたのが、いけなかったのか。
はたまた、こっそり一人だけ
朝礼を抜け出したのが仇となったのか。
受付を出て廊下を歩いていると、
後ろから感じた確かな気配に振り返った。
「おはよ!きょんちゃん」
「出た」
はあぁ~と朝からため息。
そんな京子とは対照的に、
まるで太陽を浴びた向日葵のように
眩しい笑顔を浮かべる、牧がいた。
「どうして僕ってわかったの?」
「悪寒がしただけです」
「さっすがきょんちゃん!もう心が通じ合ってる!」
「朝から元気ですねほんと」
「えへへ、きょんちゃんに会えたんだもん」