運び野郎と贋作姫
　また、咲良は父に交渉した。
　「おっさん。いまどき勉強ができないと、なんにも出来ないんだよ。学校に通わせなくてもいいから、俺と綾華に家庭教師をつけろよ」
　父は面白がり、咲良が必要だと告げた分野について教師をつけてくれた。
　同時に咲良を、自分の運び屋として使うようになった。
　「日本はまだまだ甘い。子供だと簡単に接近を許すからな」
　有価証券や宝石に危険物質など色々な物を、咲良は父の言われるがまま、せっせと運んだ。
　小学生なのに運転技術をもち、なのに目立たず、時刻通りに指示された相手にきちんと届ける咲良を父は気にいり、私から離さそうとした。
　しかし咲良が嫌がり、私も「咲良と離されるのであれば、絵を描かない」と宣言したので、仕事が終わると渋々私の部屋に返す。
　「小僧。いいか、逃げ出したら綾華がどうなるかわかっているだろうな？　綾華もだ」
　父は私達を脅迫することは忘れない。
　「「わかっている」」
　互いの命を盾に取られていたが、咲良がいることで私の生活は楽しいものになった。
　彼は私に「知識」や「世界」を運んできてくれ、「価値観」を教えてくれた。
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