運び野郎と贋作姫
 ……点滴を受けていた咲良が目を覚ましたのは、それから三日後だった。
 「目が覚めた?」
 「……ここは……」
 「私の部屋。咲良、私は綾華だよ」
 「あや、かが助けてくれたのか」
 「そう」
 正確には父だが。
 けれど、私はこれから咲良の「食い扶持」を稼ぐのだから、間違ってはいないのかもしれない。
 咲良はポツリと呟いた。
 「俺、綾華に忠誠を誓うよ」
 「……? なあに?」
 意味を知らなかったので訊けば、咲良のほうが驚いた。
 「綾華の言いつけをきいて、綾華を助けたりすることだよ」
 と説明してくれた。
 「へー」
 咲良はそれ以外にも、色々なことを教えてくれた。
 咲良は六歳、私の二つ下だった。
 両親が車から出てこなくなって以来、施設にいたのだとか。
 「俺、運び屋なんだ」
 それはなんだと訊ねれば、頼まれたものを届けるのだという。
 軽いものだと手紙やUSBから、危険物まで。
 「『転んだら、死ぬぞ』ってモンを持たされて、転んじまったんだ」
 気がついたら、私の部屋にいたという。
 また私や咲良くらいの子供は、小学校に通っているんだとか。
 「へー」
 私は関心するしかなかった。
 父は咲良がいることによって、私への鎖ができたと思ったのだろう。
 発信機付きなら、二人での外出を許されるようになった。
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