幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「今、思い出すのはきついな……」

全員と別れた俺は一人になってしまった。
身軽でいいと思う反面、自分の存在が軽いものに感じる。
ふらりとソファーに横になろうとした瞬間、インターホンが鳴った。

梶井(かじい)さん。渡瀬です。仕事の契約書をお持ちしました。女とヤッてないで、さっさと判子をおしてください』

どんな挨拶だよ。
しかも、全員清算したとこだ。
ドアを開けると渡瀬がメガネをキラリと光らせて目の前に契約書を突きつけてきた。
今日も渡瀬はグレーのスーツに引っつめ髪。
仁王立ちまでがテンプレ。
本当にこいつは一ミリもブレないな。

「ふぅん。依頼がきたか。早かったな」

「梶井さん。ヒーリングミュージックなんて珍しいですね。わざわざこの会社の社長に連絡をとってまでやりたい仕事だったんですか?」

「そう。この会社に出入りしたくてね」

「また女ですか」

あきれた顔をした渡瀬の手から書類をするりと引き抜き、手に入れた紙に口づけた。

「そう。俺をチェリストの道に引き戻した運命的な女性だ」

俺が言った言葉に渡瀬が驚いていた。
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