幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「奏花ちゃんが深月に向ける感情は恋でも愛でもない。安全な男ってとこだな。それで深月と恋愛できると思えないね」

梶井さんが言うように逢生に触れられても激しい気持ちはなにもない。
それって逢生に恋愛感情がないってこと?
でも、私が触れられてもいいって思ってるのは逢生だけ―――逢生だけだってわかった。

「帰ります……」

「帰るなら送るよ」

「結構です!」

「次は俺の名前を呼んでもらえるかな?」

「呼びませんっ!食事、おいしかったです、ごちそうさまでしたっ!」

バッグを手にして立ち上がると梶井さんにお辞儀をして背を向けた。

「深月だけずるいな」

ずるい?
なにがずるいの?
引き返す勇気はなかった。
今、振り返ると引き戻されそうだったから。
梶井さんの言葉は私の心をかき乱す。
じわじわと黒く影に染まるみたいに私の心を不安にさせる。
逢生と似ているけど似てない―――バッグを握る手に力がこもった。
『恋愛できると思えないね』なんて言わないで。
まるで、その言葉が呪いの棘みたいに胸に突き刺さっていた。
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