幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「引っ越したい。一分後にでも引っ越したい」
呆れた顔で唯冬が俺を見た。
「余裕はどうした」
「そんなものない。奏花のこと二十四時間監視したい」
「おーい!戻ってこい!余裕!」
知久の願いは叶わないよ。
心が乱れているとチューニングさえ、うまくいかない。
自分の気分を音にのせないタイプのはずなのに奏花のことだけは別。
奏花だけが俺の心の乱す。
激しく苦しく辛い―――
「梶井と一緒のマンションは嫌だ。奏花が危ない」
「おい。深月。梶井さんって呼べよ。俺は危険物か」
嫌な奴が近寄ってきた。
一緒に桑地までいる。
宰田め。
恨んでやる。
こんな仕事を引き受けたことを末代まで祟るからな。
「梶井さん。この曲の部分はどうします?」
俺からピリピリとした空気を感じた唯冬は梶井を俺から遠ざけようと話しかけ、梶井をなるべく遠くまで連れて行った。
その代わりに桑地が俺に近づいた。
「深月。すこしいい?」
良いも悪いも答える前に桑地は俺を見おろすように前に立ち、長い髪をさらりと俺の頬に落とす。
まるで誘惑するように。