幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
このお願いだけはきいてほしかった。
会場で選ぶつもりだった―――母か、チェロか。
優勝しなければ、菱水音大に進学するつもりでいた。
そして、母と一緒に暮らし続ける。
俺と一緒にいたいと少しでも思ってくれているのなら、来てくれるはずだと思っていた。
「じゃあ、行ってくるわね」
「待って。行かないで」
いつもなら、絶対に言わない言葉だった。
なぜかその日、ここにいて欲しいと思ってしまった。
「理滉。なに言ってるの?高校生にもなって子供みたいな真似をしないで」
とっさに母の手をつかんだけど、その手を乱暴に振り払われ、アパートのドアが閉まる。
一度も俺を見てはくれなかった。
俺を拒絶するように背中を向けて出て行った。
振り向きもせずに。
コンクール当日の朝、母はアパートに戻ってこなかった。
それが母の答えだと俺は思って諦めた。
『家族』という存在を諦めた瞬間だった。
俺の演奏の時間になっても母はこない―――わかっていたはずだ。
母は来ない。
俺は舞台に立つ。
母の好きなサンサーンスの白鳥。
観客席からは静かな熱が伝わってくる。
俺の演奏を聴き、感動してくれる。
俺だけを見てくれる。
会場で選ぶつもりだった―――母か、チェロか。
優勝しなければ、菱水音大に進学するつもりでいた。
そして、母と一緒に暮らし続ける。
俺と一緒にいたいと少しでも思ってくれているのなら、来てくれるはずだと思っていた。
「じゃあ、行ってくるわね」
「待って。行かないで」
いつもなら、絶対に言わない言葉だった。
なぜかその日、ここにいて欲しいと思ってしまった。
「理滉。なに言ってるの?高校生にもなって子供みたいな真似をしないで」
とっさに母の手をつかんだけど、その手を乱暴に振り払われ、アパートのドアが閉まる。
一度も俺を見てはくれなかった。
俺を拒絶するように背中を向けて出て行った。
振り向きもせずに。
コンクール当日の朝、母はアパートに戻ってこなかった。
それが母の答えだと俺は思って諦めた。
『家族』という存在を諦めた瞬間だった。
俺の演奏の時間になっても母はこない―――わかっていたはずだ。
母は来ない。
俺は舞台に立つ。
母の好きなサンサーンスの白鳥。
観客席からは静かな熱が伝わってくる。
俺の演奏を聴き、感動してくれる。
俺だけを見てくれる。