幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「嫌な嗜好だな」

「自分でもそう思います」

母が死んで以来、初めて泣いた。
声もなく―――ただ静かに涙がこぼれて落ちた。
男の涙が好きだという渡瀬が抱きしめてくれた。
こいつがこんな真似できるとは思っていなかったから、正直驚いた。
でも、今は助かる。
誰にも泣いていることを見られたくはない。
知られたくもない。

「勘違いしないでください。甘やかすのは今だけですからね」

「ああ……」

こいつの香りは甘くない。
緑と水の香りか―――その甘くない香りが俺の頭を明瞭にさせた。
これから進むべき道も。
小さな彼女と出会ったこの東屋の中で決断する。
彼女の幸せのために去ることを。
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