幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
見てみぬふりもできないし、かと言って長時間、あの黒い悪魔と戦い抜く自信もない。
怖い。
正直言ってやつが怖い。
逢生かゴキブリか。
恐怖感を考えたらゴキブリ―――?

「そうね。逢生とルームシェアだと思えば別にたいしたことじゃないわね」

だいたい逢生を救出しに留学先に行った時は同じアパートで寝泊まりしたんだし。
意識する私がおかしかったのよ。
きっと演奏を聴いて、ちょっとばかりかっこよく見えたから頭が混乱したのね。うん。

「ゴキブリか俺か、今、選んでなかった?」

「え?えーと、気のせいよ」

嘘だ。
究極の選択を私はした。
これが生きるための選択ってやつですか。
なるほど。

「でも、私が男として逢生のことを意識できなかったら諦めてよ。正直言って弟みたいなものだからね?」

「はっきり言われると傷つく」

「言わないとわからないからでしょうがっ!」

まったくなにが傷つくよ。
引っ越し先まで決めているだけじゃなくて、ちゃっかり私まで同居させることを考えているなんて。
とんでもないやつだわ。
いつから、そんな策士になったのよ。

「じゃあ、マンションの鍵を渡しておく。来週までに荷物をまとめておいて」

「来週!?早くない?」

「気が変わらないうちにだよ」

「う、うん」

なんだかいつもより強引な気がしたけど、うなずいた。

「絶対に俺のことを好きになってもらうよ」

そう言って、逢生は私にカードキーを渡してくれた。
これは逢生からの宣戦布告。
私には渡されたカードキーが逢生からの挑戦状もしくは果たし状のように思えてならなかった。


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