幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
寝過ごした時もすぐに迎えに行ける距離にしたってわけ。
さすが渋木さん。
しっかりしている。

「防音室があるマンションを選んだだけ」

「……寝坊対策じゃなかったの?」

心を読まれてしまった。

「違う」

カードキーをエレベーターから抜く。
そのカードを口元にあて、逢生は耳元で囁いた。

「奏花が起こして」

自分で起きなさいよっといつもなら、言えていたのに言葉が出なかった。
耳を手でおさえているとくすりと逢生が笑う。

「行こう」

どこでこんな真似覚えてくるのよ!
きっとあの二人ね!?
ろくなことを教えないんだから。
エレベーターの中がいつもより狭く感じているのは気のせいじゃない。
逢生から距離をとろうとしているのにとれない。

「奏花、顔が赤い」

「エレベーター内が暑いせいです!」

逢生はするりと自分の指を私の指に絡めて手を握った。
ちょ、ちょっとー!
これはまずい、まずい展開よ
相撲で言うと寄り切り。
頭の中で相撲の行司(ぎょうじ)軍配団扇(ぐんばいうちわ)を持っている姿が頭に浮かぶ。

「あ、逢生!手を離して」

「どうして?奏花は俺のこと意識してなかったんじゃなかった?」

エレベーターのドアが開き、手を握ったまま出るとそこに人がいた。
あああ!イチャイチャしてたんじゃないんですー!と見知らぬ人にまで言い訳をしそうになった。
けれど、その人は見知らぬ人じゃなかった。
エゴイストプラチナムの香り、首元のシャツのボタンをはずし、手にジャケットを手にしている姿は大人の男性という雰囲気。
コンサートで出会ったパンプレットを拾ってくれた人だった。
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