幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
涙を指ですくって笑った。

「俺はなにをすればいい?」

「他の女のところに行かない証拠をみせて」

紅い唇、黒い髪、凄惨なほどの美人。
外見が好みだから付き合ったけど、これは相当嫉妬深い女だな。
でも、俺は君のものにはなってあげれない。
けれど、この瞬間だけは救ってあげよう。

「わかった」

長く伸びた爪が腕に赤い痕を残した。
痛みで顔をしかめるどころか、笑った俺を傷つけた女がおびえたように見る。

「満足したか?じゃあな」

俺がそう言うと女は自分の腕を握り、なぜか震えていた。
煙草を吸ってから、出ようと思っていると部屋のインターホンが鳴った。

「まだチェックアウトの時間じゃない……」

開けた瞬間、鬼の形相をしたひっつめ髪にメガネ、地味なグレーのスーツを着た女が仁王立ちしていた。

「梶井さん。今日のスケジュール渡しましたよね?昨日も確認してから別れたはずですが?とうとうスケジュールも記憶できないほど、堕落しましたか?」

マネージャーの渡瀬(わたせ)結心(こころ)だった。
女だけど女じゃない。
もう鬼だ、鬼。

「そうだったかな?」
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