映画のようなラブストーリーを
待ち合わせ場所は、普段から色んな人によく"待ち合わせ場所"として使われている赤いオブジェがあり、背の高い時計が立つ場所。
わたしがその場所に着くと、たくさんの待ち合わせをしている人たちの中に周りをキョロキョロしている男性がいた。
30代くらいで、爽やかな印象の黒髪の男性。
この人かな?
この人なら、別に見栄を張って"彼女いる"なんて言わなくても、普通に彼女出来そうだけど。
そう思いながら、パンプスのヒールをコツコツと鳴らせながら歩いて行くと、声を掛けようと思った直前で彼はこちらを向いた。
「あ、、、」
「五十嵐さんですか?」
わたしからそう訊くと、彼は恥ずかしそうに「はい。」と頷き、それから「美紅さんですか?」と訊いてきた。
"美紅"とは、わたしのレンタル彼女としての名前で、仕事中は"椎名美紅"として働いている。
「はい、椎名美紅です。初めまして。」
「あ、は、初めまして。今日はよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
そう挨拶を交わし、わたしは五十嵐さんの腕に自分の腕を絡ませた。
すると、ハッとして照れながら「い、行きましょうか。」と言う五十嵐さん。
五十嵐さんのこの感じ、全然女慣れしてないなぁ。
それからわたしは五十嵐さんと共に、五十嵐さんの友達カップルと待ち合わせをしている居酒屋へと向かったのだった。