未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない
その光景をみつめていた龍は、翔真に語りかけた。
「翔真。『負けるが勝ち』って言葉、知ってるか?」
「負けるが勝ち?」
「そう。男には黙って引き下がらなければならない時があるんだ。大切なものを守るためにね。翔真はママが大好きなんだろ?」
翔真は大きく頷いた。
「翔真は悪くない。弱い者いじめをする奴と戦ったんだ。それはすごいことなんだ。でもな・・・相手を傷つけてしまったことも事実だ。それに対してはちゃんと謝らなければならないんだ。そうしないとママを守れない。わかったか?」
「うん。」
翔真は真面目な顔でハッキリと答えた。
「よし。偉いぞ。」
龍は翔真の頭を撫でた後、椿を優しくみつめた。
「椿さん。雨で身体が冷えている。すぐに風呂に入った方がいい。」
そう言って背中を向け、ドアを開けた龍に、椿は戸惑いながらも声を掛けた。
「龍さん・・・ありがとう。迎えに来てくれて。」
龍は振り向かずに言った。
「当たり前だろ?椿さんは俺の大切な人だからな。じゃ、お休み。」
「お休みなさい。」
龍は静かにドアを閉め、自分の部屋へ戻って行った。
龍が去った部屋で、翔真の手を握りしめながら、椿は龍の言葉を何度も思い返していた。