未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない


しかし椿と信、そして翔真の三人家族としての幸せは長く続かなかった。

翔真が生まれて三年後、信はあまりにも突然にこの世を去った。

病名は『急性心不全』だった。

病院のベッドで息を引き取る瞬間、信は意識を手放したまま一筋の涙をこぼした。

窓の外には、雨上がりの空に虹がかかっていた。

それは信が椿と翔真に見せた別れの挨拶だったのだろう。

椿はもう二度と目を覚まさない信の頬にそっと触れ、その体温の冷たさに心が折れた。

肩を震わせながら俯く椿に、翔真が無邪気な声で尋ねた。

「パパ、ねんねしてるの?」

「・・・・・・。」

「ママ?」

「うん。パパはお空に行ったんだよ。」

「ママ・・・泣かないで。」

椿は膝を折り、翔真の小さくて温かな身体を強く抱き締めた。

< 7 / 205 >

この作品をシェア

pagetop