未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない
しかし椿と信、そして翔真の三人家族としての幸せは長く続かなかった。
翔真が生まれて三年後、信はあまりにも突然にこの世を去った。
病名は『急性心不全』だった。
病院のベッドで息を引き取る瞬間、信は意識を手放したまま一筋の涙をこぼした。
窓の外には、雨上がりの空に虹がかかっていた。
それは信が椿と翔真に見せた別れの挨拶だったのだろう。
椿はもう二度と目を覚まさない信の頬にそっと触れ、その体温の冷たさに心が折れた。
肩を震わせながら俯く椿に、翔真が無邪気な声で尋ねた。
「パパ、ねんねしてるの?」
「・・・・・・。」
「ママ?」
「うん。パパはお空に行ったんだよ。」
「ママ・・・泣かないで。」
椿は膝を折り、翔真の小さくて温かな身体を強く抱き締めた。