うちの訳アリ男子たちがすみません!
葵は興奮したように私の肩をがしっとつかむ。
「さくらの知り合い⁉ 私の推しにめっちゃ似てる!」
葵はブレザーの内ポケットから長方形の紙を取り出した。
それは一人の男性の顔がドアップで写されたブロマイド。
確か韓国グループが好きだったんだっけ。
ブロマイドの男性はさわやかな笑顔を見せている。
「ほら、この人! 目とか口とか、似てない⁉」
鼻にくっつくぐらい近づけられて、私は男性とミケくんを見比べる。
うーん、瞳の色は違うけど、確かに大きい目や丸い骨格は似ていなくもない……かも?
葵は私の反応の薄さに不満そうだ。
「絶対似てるって思ったのになあ」
そう言いながら大切そうにブロマイドをしまった。
楓くんが歩み寄って聞いてくる。
「さくらちゃんの友達? 面白い子だね」
その声に振り向いた葵が、ふぎゃっと変な声を出す。
「こっちにも、イケ、メン」
楓くんはいつものにっこりスマイルで、やあとあいさつすると、
「ふぎゃあっ」
矢で射抜かれたみたいに葵は膝から崩れ落ちた。
楓くんたち一同はぎょっと引いている。
そうなんだよね。葵は、イケメンに話しかけられると、少しの間制御不能になるんだ。
葵はしゃがんだまま、ぶつぶつ独り言を言う。
「イケメンが……私に……」
こりゃ、戻るまでしばらくかかるな。
私は肩をすくめた。