うちの訳アリ男子たちがすみません!
振り返ると天くんが顔を押さえてうずくまってる。
ボールも変なとこに転がってるし、どうやらコントロールを誤って自分で顔を打ったらしい。
さっきまであんなに器用にあやつってたのに、いったいどうしたんだろ?
テレビではあさひなちゃんのとびっきりの笑顔が映し出されていた。
『こんばんはー! 現役高校生のあさひなです。よろしくお願いしまーす!』
「僕、この人見たことある気がするぅ……」
ミケくんはぽつりとつぶやくと、首をかしげた。
そりゃ、当然だ。あさひなちゃんは今や、SNSのフォロワーが100万人を超える、超人気のタレント。
映画の出演も控えてて、テレビに引っ張りだこなんだから!
ところがわん太くんも、そろって顎に手を当てた。
「俺っちも知ってる~。あれ、でもどこで見たんだっけ?」
その様子を見て紫苑くんは、あきれたようにため息をついた。
「まさか、忘れたんですか? この方は、て……」
そこまで言ったところで、後ろから天くんが紫苑くんを羽交い絞めにする。
「うぐっ」
「よ、よよよけいなこというな!」
さっきから天くんの挙動がおかしい。
何やってるんだ?
私は冷めた目を向ける。
あさひなちゃんは大人に囲まれていても物おじせず、きちんとコメントして笑っていた。
司会者があさひなちゃんに映画の話題を振る。
『そうなんですよー。公開はもう二週間を切っていて。公式SNSではカウントダウン動画を投稿しているので、そちらもぜひご覧くださいー!』
あさひなちゃんが視聴者に向かって、にこっと満面の笑みを見せた。
ま、まぶしい……!
ずきゅんと私の胸が射抜かれたみたいに高鳴る。
「秘密にしとくんです? 先に言っておきますけど、時間の問題でしょ」
「うるさい」
紫苑くんはうらみがましい目で天くんをギロッとにらんでる。
いったいなんの話なんだか。
よくわからない会話だ。
「もういいっ。風呂入ってくる!」
天くんはついには、ぶすっと機嫌が悪そうな顔をさせて出て行っちゃった。
紫苑くんは肩をすくめる。
やっぱり天くんはツンツンだなあ。