独占彼氏〜独り占めして、何が悪い〜
第10章ー交差する未来、揺れる決意ー

蓮の告白



 

卒業まで、あとひと月

校内に流れる空気も、制服も、どこか“終わり”の匂いを纏い始めてた

けど俺たちは、まだ“始まり”の途中

進路が決まりかけたその日

 

えれなはまた、あいつ――蓮と話してた

教室の隅で、進学資料を持って
えれなを真っ直ぐに見てる蓮の顔は



もう完全に“想いを伝える覚悟”をしてる顔だった

 

 


「えれなちゃん、俺……最後にだけ、ちゃんと言わせて」

 

その言葉を教室のドア越しに聞いた瞬間
指がピクリと動いた

これが“最後の告白”になるってわかってた

 

えれなの目は、真っ直ぐ蓮を見てた

俺を信じてくれてるのはわかってる

でも――


胸がざわつくのは、あいつが“同じ未来”を目指してる男だから

 

遠くからしか見えない距離

声は聞こえないけど、あいつの口がゆっくり動くのが見えた

 

「好きだった、えれなちゃん」

 

...いや、“だった”じゃねぇ

今も、って顔してんだよ


 

えれな

お前がどう返すのか、わかってても

俺の心臓には、やっぱキツすぎる

 

俺、教室で待ってる――

ちゃんと、お前の口から聞かせてくれ

“誰の手を選ぶか”をさ

 

 

ーえれなsideー

 

「好きだった、えれなちゃん」

 

...え?

蓮くん、今そう言った?

 

驚きすぎて 言葉がすぐ出てこなかったけど

でも

答えはもう決まってた

 

「蓮くん...私のことそう思ってくれてありがとう

全然...気づかなかったなぁ...っはは」


思わず笑ってごまかしながら...
 

蓮くんも冗談めかして笑った

 

「そう?だいぶアピールしてたつもりだったけどな」

 

でも

ちゃんと伝えなきゃ

 

「わたし、嬉しかったよ

同じ目標を持つ蓮くんと話すようになって

進路のこともいっぱい相談できたし

ほんと、なんでも話したよね」

 

「でも...もし一つだけ違いがあるとしたら

 私には、その目標の前に“大事な人”がいる

その人と一緒に未来を歩くからこそ

私は保育士を目指してるんだ
 

だから...
蓮くんの望む答えはしてあげられない

...ごめんね」

 

「でも蓮くんがいてくれて良かった

「同じ目標を持つ仲間としてこれからもよろしくね?」

 

 

蓮くんは少し寂しそうに笑って
でも優しく答えてくれた

"またね えれなちゃん"と残し
背を向け歩き出した蓮くんに

 

「こちらこそ...話してくれてありがとう応援してるから」

 そう答えた

 

そして私はふと、アオの方を見て呟いた

 

ーー”アオ、私にはアオしかいないんだからね”

 

 

ーアオsideー

 

全部の言葉が聞こえたわけじゃない

けど、えれなの最後の声だけは――

空気の中で鮮明に俺の胸に突き刺さった

 

「私にはアオしかいないんだからね?」

 

 

その瞬間

俺はもう、耐えきれずに立ち上がってた

 

教室のドアが開く

 

廊下の向こうに、お前の姿が見えた

どこか照れてるのに、目だけは真っ直ぐで

 

「...終わった?」

 

声が少しだけ震えてたのは

嬉しさなのか、安心なのか

それとも全部だったのかもしれない

 

お前がゆっくり近づいてきて

手が俺の手にふれた瞬間、全てがわかった

 

蓮の想いも、お前の答えも――

もう、疑う余地なんて一つもなかった

 

 

「...ありがとう、えれな」

 

そう言って、強く抱き寄せた

 

もう誰にも言わせねぇ

お前の未来に、俺がいないなんて

 

――これでやっと

本当の意味で“2人の進路”が決まった気がした

 

 
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