名前も知らない貴方とだから恋に落ちたい





私のツッコミも届かず、数口コーヒーを飲むと私の方へ差し出してきて、受け取らない私に首を傾げた。





「俺が口つけたの飲むの、嫌でした?」


「…嫌じゃない、です。でもすんなり受け取るのも、違うなって思ってしまって」


「じゃあ…、はい。どうぞ」


「…いただきます」





恐る恐る受け取って、缶コーヒーに口を付けた。



私が飲む瞬間を、目に焼き付けるように見入る好青年。


そんなに見られると、飲みづらい。





「…美味しい」


「良かった。そういえばさっき、夜にカフェイン摂ると良くないって言ってたけど、何でですか?」



「カフェインは摂りすぎると、目が冴えてしまうので。夜には大敵です」


「でも今の俺らには、カフェインが必要だね」


「そう、ですね」





日が昇るまで、ここに居る。


それまでは、絶対に起きていたい。



好青年の言う通り、私たちにはカフェインが必要だ。





「もう一口、もらって良いですか?」




あと数口で終わるコーヒー。


ブラックコーヒーのはずなのに、甘かった。



恋をすると、ブラックコーヒーも砂糖入りになってしまうみたい。




口直しに水を飲もうと思っていたから、そのままコーヒーを渡した。


喉を大きく動かす好青年を見ながら、水のキャップを左に捻る。




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