名前も知らない貴方とだから恋に落ちたい
疑いもなく話しかけたくなる人懐っこい笑顔と、私が好青年に向けている興味。
これが合わさって、缶一本で話は大いに盛り上がった。
時間もあっという間に過ぎ、ほんの少し空が明るさを見せてきた。
そろそろ、好青年は帰る頃だろうか。
「あ、もう日の出だ」
「本当ですね」
あっという間でしたね、なんて言えば私がこの時間を楽しんだことを丸出ししてしまって恥ずかしい。
言わずに、当たり障りのないことを言おう。
「…日の出だ」
考えすぎて、復唱しただけ。
こっちの方が恥ずかしい。
「あっという間だったな。君と過ごせて楽しかった」
「え…。お邪魔じゃなかったですか?」
「邪魔だなんて。そんなの思わないよ。むしろ今日は、一人でいたくなかったから…。君が居てくれて、嬉しかった」
私が言わないでおこうと思っていたことをすんなり言われて、飛び上がって喜んでしまいそうになったけど、どうにか抑えた。
でも、一人でいたくなかったと言う好青年の表情は曇っていて、思わず踏み込んでしまいそうになった。
お互いに名前を聞かずに日の出を迎えてしまったから、このまま聞かない方が良いんだと思う。
知りすぎてしまうと、聞かなくても良いことにまで踏み込んでしまうから。