髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

4. ルシアナ、姉の髪について考える

「うーーーーん。やっぱり濡れた髪を放置しているのが一番の問題よね」

 ベロニカの婚約話しから一夜明け、ルシアナは紙を広げ羽根ペンを片手に唸った。
 
 くせっ毛が酷くなる原因として挙げられるのは、ストレスや寝不足、栄養不良や加齢など色々とあるが、ベロニカの場合で言えば最も考えられそうなのは頭皮や髪の乾燥だろう。

 ルシアナはたまたま専属の侍女が魔法を使える為、洗髪後に風をおこしてもらい髪の毛を乾かしているが、自然乾燥させて済ますのが一般的なのだ。
 濡れた髪をそのままにしておくとキューティクルが開いているのでダメージを受けやすく髪内部の水分まで抜けてしまう上、雑菌だって繁殖しやすい。
 本来ならドライヤーをあてて根元から素早く乾かした方が良いのだけれど……

「電気なんて、ありませんものねぇ……」

 ドライヤーなどという文明の利器はこの世界には存在しないので使えない。

「とりあえず念入りにタオルドライして貰うしかないわね。あっ、扇子で扇ぐのも効果あるかも」

 紙に『念入りなタオルドライ』『扇子で扇ぐ』と書き付けて次の項目へ。

「次はシャンプーよね」

 前世の世界には石油系やアミノ酸系のシャンプーが主流だったけれど、こちらの世界で使われるのはもっぱら石鹸だ。そもそも石油なんてものが存在しないのだから石油系合成界面活性剤なんてある訳ない。
 アミノ酸系シャンプーも人気だったし前世の自分が務めていたヘアサロンでも使っていたけれど、はて……アミノ酸……。
 アミノ酸が洗浄成分の主原料なのは分かるが、一体何からどうやってそのアミノ酸とやらを取り出して作り出すのか。

 たしかアブラヤシから作るものが多いって聞いたことがあったけど、ヤシってくらいだから南の方に生えている木よね?
 南国からアブラヤシを取り寄せたとして、樹液から成分をとるの? それとも実の方?? もしかしたら葉っぱかも……???
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