髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「そんなことありませんわ。お姉様の魅力が分からないあの男が大馬鹿なだけです」
「聞いていた他の男性たちだって、窘めることもせず本当のことだと言って笑っていたじゃない。みんな同じ考えだったってことよ!」
あの場にいたのがクズ男ばかりだったのが悔やまれる。「そんなことない! ベロニカ様は魅力的な方だ」とでも言って、素敵な青年でも現れてくれたら良かったのに。
現実は小説のようには、なかなか上手くはいかないようだ。
「分かりました、お姉様」
「何がわかったの?」
「わたくしがお姉様のその髪、なんとかしてみせますわ!」
幸いなことにタイミング良く、ルシアナは前世が美容師だったことを思い出している。
今の自分だったら姉の髪の毛をケアして、もっと素敵に仕上げられるかもしれない。
「わたくしが前世の記憶を取り戻したのは、この為だったのかもしれないわ。まさしく神の思し召しっ!!」
「ル、ルシアナ? あなた、頭大丈夫?」
ルシアナが姉の髪の毛を改善してみせると決意を固め、グッと拳を握る中、ベロニカや侍女達は若干引き気味である。
「ええ、もう絶好調です! ちょっとお姉様、頭を失礼しますわね」
早速ルシアナは、今のベロニカの髪の状態を確認していく。
「うーん……乾燥が酷くてパサついてますわね。お姉様は肌も乾燥しがちですか?」
「ええ。お肌の手入れを怠ると、痒くなるくらい乾燥肌ね」
「お姉様がお使いになっている石鹸はわたくしと同じよね?」
「はい。スタインフェルド家の皆様は、奥様が選ばれてご購入している石鹸をお使いです」
質問に即座に応えたダフネに、モニカも首を縦に振っている。
「オイルはどうかしら?」
「ベロニカお嬢様が使っているのはこちらです」
ダフネからオイル瓶を受け取って、クンクンと香りを嗅いでみる。
「これはオリーブオイルよね?」
「左様でございます」
「ならわたくしと同じだわ」
オリーブオイルは髪の毛から爪の先まで、全身の保湿によく使われる、この国ではごく一般的なオイルだ。そこに花や果実などから採れるエッセンシャルオイルを加えて香り付けされたものが売られている。
「うーん……分かりましたわ。とにかくお姉様、あの男のために落ち込んでやる必要なんてないのですから、気を強く持ってくださいませ!」
「え……ええ」
「ダフネ、お姉様に気持ちの安らぐようなハーブティーでも入れてきてくれないかしら。それではわたくしはこれで失礼しますわ」
くるんっ! とドアの方へと体の向きを変えたルシアナは、姉の部屋を出て早速プランを練ろうと自分の部屋へと戻って行った。
よぉーしっ! お姉様の魅力をもっと引き出して、あの男の鼻を明かしてやるんだから!!