眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
ノックをして入ると、朝岡がデスクで書類に目を通していた。
「どう? 川野さんと連絡取れた?」

「はい。少し強く押しましたが、夕方5時に訪問の約束を取り付けました。ただ、警察官の立ち会いは、強く拒否されましたので……今回は私ひとりで対応します」

朝岡はペンを置いて、花音をじっと見た。

「……怖くない?」

花音は一拍置き、笑ってみせた。

「怖いです。でも……結咲ちゃんを一人にしている方が、もっと怖いです」

「……うん。わかった。対応は単独でも構わない。ただ、所内にスケジュールは必ずシェアして。何かあったらすぐ連絡して」

「はい、ありがとうございます」

花音が頭を下げて出ていこうとしたとき、朝岡がふと声をかけた。

「……佐原さん。無理しないようにね。『声を届けること』と『踏み込みすぎること』、その境界を見極めて」

「……はい」

一歩ずつ。
信頼も、支援も、時間がかかる。
だからこそ、今日の5時は、たった数分でも、確かな一歩になると信じた。
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