リアライズの殺人〜私は不仲のアイドルグループメンバーです。〜
「和哉君、ゲストでやって来るのは麗斗君ひとりだけじゃないよ。ヒロイン役の鳴海響香も一緒。」
───その時。
私が響香の名前を出した瞬間、私の斜め前でビールを飲んでいた淳平君の表情が変わった、ような気がした。
言葉では上手く説明出来ないけれど、怒りとも悲しみとも苦しみともつかない、初めて見せるネガティブな感情を強く孕んだ顔だった。
それはほんの数秒の事で、もしかしたら私の見間違いかもしれない。
けれど、そんな顔を見てしまった私はつい反射的に訊いていた。
「響香を知ってるの?淳平君。」
すると淳平君はハッと気づいたようにこちらに視線を合わせ、また穏やかな表情に戻ると、クスクスと笑いながら言った。
「そりゃ知ってるよ。今一番推されてる若手女優さんだからね。」