報復を最愛の君と

能力

私達はそのまま警備をまくために、街外れにある森へと逃げ込んだ。
追ってきた警備員も、さすがに森のなかでは見にくいだろう。
そう思い、私達は茂みの中で息を潜めた。
数分間警備員達が騒がしく私達を探していたが、諦めたのか戻っていく様子が見られた。
その様子を見て、私達は安堵(あんど)のため息をつく。
「なんとかなりましたね〜。というか、よく姫様分かりましたね!?まさかもう警備を呼ばれてたなんて…」
「ああ、うん。なんとなくね。カナタって意外と慎重なタイプだし」
警備員を呼んでいなければ、きっとカナタは姿を現さなかったと思うから。
気がついて本当によかった。
じゃないと、捕まっていたかもしれないし。
「ヒメアはよかったの?」
突然、ソラにそう尋ねられる。
「え?何が?」
「いや、仮にも親しい仲だろ?別れがあんな形でよかったのかなって…」
こんな時まで、ソラは私の意思を尊重しようとするんだね。
ちょっと驚いた。
でも、自分の中では吹っ切れたと言うか。
「うん。大丈夫だよ。それに、また復讐が終わる時に会うだろうしね」
「そっか…」
悲しい顔を浮かべるソラに疑問を持ったが、誰もそれについては触れなかった。
それから、スイが困ったように聞く。
「今日は野宿かなぁ?でも、明るくならないうちに移動したほうがいいよな。朝になったら探しきくるかもしれないし」
「そうですね…。確かにその通りですけど、この中森を進むのはやめておいたほうがいい気がします」
朝になったらまた捜索されて見つかっちゃうかもしれないよね。
でも、夜に移動するには危ない。
ちなみに、人魚は夜型だから夜目がきくから私は大丈夫なんだよね。
どうしようかな。
そんな時、少し遠くから波の音が聞こえた。
「あっ!いい方法があるよ!ついてきてくれる?」
私はとあることを思いついて、3人に提案をした。
3人はきょとんとした後、小さくうなずいてくれた。
そうして、私・ソラ・ルナ・スイの順番で森を抜けていく。
誘導は私がした。
そして、そこにあったのは大きな海。
城の近くに海があったのは知っていたから、感覚で来れてよかった。
「朝になったらここからフロス国に向かおう。私が海を操って渡れるようにするよ。追手が来ても、ここならすぐ分かるしね」
人魚は海水を自由に操れるから、この水で船に似たものを作ろうと思う。
海水は常に人魚の味方。
だから、きっと協力してくれるこの海が。
「なるほど。月明かりで辺りも見やすいし、いいですね!」
「うん。そうだね」
「なるほどな。…でも、それだとヒメアの負担にならないか?」
私が何をしようとしてるのか、ソラには全部分かってるみたい。
ソラに向きなおって、私はうなずいた。
「大丈夫だよ。海は人魚の味方だから、どんな時も味方してくれるの」
「そっか。ヒメアが大丈夫なら、任せるよ」
「えっ。なになに、どういう話?」
どうやら全く分かっていない様子のスイとルナ。
私はクスッと笑ってから、唇に人差し指を当てた。
「なーいしょ」
「そーそー。んじゃ、今日はここで野宿な〜?」
「わ…かりました?」
2人の様子に、ソラとクスクスと笑い合った。
ーーーーー
その頃、遠方からはカナタがヒメア達を監視していた。
「最初から俺のこと疑ってたわけね。ソラ王子に護衛のスイ、使用人であり隠れ聖女のルナ。はぁ…こっちもさっさと計画を進めなければ」
そう言って、カナタは不気味に笑ったのだ。
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