報復を最愛の君と

三大能力者

和気あいあいとしゃべっていた時間も終わり、私達は眠りについた。
私達はルナが持ってきてくれていたシートの上に寝転んだ。
野宿って結構心配だったんだけど、みんながいるからかとても楽しかった。
星を見ながら、私はそんなことを考えていた。
いつの間にかスイとルナは寝てしまっている。
私はまだ寝つけない。
やっぱり環境になれないのかな。
そう思い、私は少し海に入ってみることにした。
お父様には人魚でいることを叱られたため、海水には一切触れてこなかった。
だからかな、こんなに不思議な感じなのは。
私は姿を人魚へと変えて、海に入った。
海水に触れた瞬間、一気に体が軽くなって引き寄せられているみたいだった。
引き寄せられてそのまま私は進んでいく。
水の中では息ができないし、なんなら沈められたことがあるからか恐怖があったはずなのに。
あれは…怖かったな。
『人魚なんでしょ?なら沈んじゃないなさいよ!!』
息ができなくて、苦しくてたまらなかった。
お風呂場で使用人に顔を水の中に入れられた。
心配したカナタがきて、助けてくれたんだっけ。
でも、この海水には恐怖を全く感じない。
「わっ。結構深いところまで来ちゃった」
もう足がつかないくらいのところまで来ていて、そんな自分に驚く。
少し興味が湧いて、水中に入ってみることにした。
息を止めて思い切って入ってみる。
目を開けると、そこは想像以上にきれいな場所が広がっていた。
それから、どこからか声が聞こえた気がした。
『お久しぶりです!帰ってきたんですねカノン様!』
驚いて息をしてしまったけれど、不思議と陸にいる時よりも息が上手くできた。
そっか、人魚って海の中でも呼吸できるんだ。
それよりもどこか回復しているように感じられて。
驚きで固まってしまった。
『って…よく見たら違いますね?誰ですか?!』
目の前にいるきれいな青色のお魚さん…。
って、魚がしゃべってる?!?!
「え?え?あれ、私魚としゃべってる?!」
魚って言葉話せたんだっけ。
なんて、驚きすぎて変なことを考えた。
『人魚の能力ですよ。海に住む生き物とは会話できるんです。それよりも、あなたは誰ですか?』
少し怒った様子の魚さんがかわいくて、私はクスッと笑った。
「私はヒメア・イコロ。イコロ国の姫なの。あなたは?」
『私はエクラといいます。クラとお呼びくださいませヒメア様』
礼をするような様子を見せた後、私にグッと近づいてきたクラ。
それから、興味津々に私を見てくる。
『300年ぶりに戻ってきたと思ったら、違う人でしたね。でも、この髪色はそっくりです』
「髪色…」
この銀白の髪のことを言っているのだろう。
この髪色は人間には珍しいもので、それが能力者の証…呪いだとそう言われてきた。
まあ、実際銀白の髪って見たことないし。
人間にとっては気持ちが悪かったはずだから。
『その髪色は三大能力者である証ですよ!もっと誇ってください!』
そう言われて、私は首をひねった。
「三大能力者って…?」
初めて聞く言葉だったから、意味を知りたかったんだけど…。
上で私を呼ぶ声が聞こえた。
『呼ばれているようですね。じゃあ、またお話ししましょうね』
クラがそう言った途端(とたん)、波がグッと押し寄せてきて。
私の体は自然と海面へと上がっていった。
三大能力者。
その言葉が胸でざわついたまま、クラと少しのお別れをした。
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