報復を最愛の君と
同じ道を歩んだ君
そう語ったセレストは、悲しそうな表情を浮かべた。
「暴走…?」
「そうだよ。ボク達三大能力者は大きな力を抑えるために、精神を保たなきゃいけないんだ。でも、ボクは怒りによって能力を抑えられなくなったんだよ。ヒメアもそういう経験ない?」
そう言われて、私は記憶をたどってみる。
そういえば、この前海が荒れたって新聞が王宮にも届いてたっけ。
地震も起きていないのに津波のようになったって。
あの日私はお父様にしかられて、ずいぶんと落ちこんでいたはず。
「ある…かも」
「でしょ?自然はボク達に影響されちゃうんだ。あの日もありえないくらい空が荒れたんだよ」
「天竜だから…?」
私がそう聞くと、セレストはまた悲しそうに笑った。
「そうかもね。でもね、ボクを止めてくれた人がいたんだ。それがカノンだよ。ボク達に寿命がないのは知ってるでしょ?」
「うん、知ってるよ」
「ボク達には寿命がないかわりに、能力の限界があるんだよ」
「能力の限界?」
私は首をかしげる。
すると、セレストはゆっくりとうなずいた。
「能力の限界に達したら、ボク達は自然に帰ることになる」
「そ、それって…」
嫌な予感がした。
もし、能力の限界まで使ってしまったら…死ぬってこと?
「死ぬことになるんだよ」
「っ…!!」
やっぱり、そうなんだ。
寿命がない初代人魚が死んだ理由、それは能力を使い過ぎたからなんだ。
「カノンはボクが死ぬのが嫌だったんだって。それで、ボクの暴走を自分の限界が超えてでも抑えようとした。その結果、カノンは海に帰ってしまったんだ」
今、なんとなくわかった気がする。
後悔、してるんだ…。
自分のせいでカノンは死んだんだって、後悔と悲しみでぐちゃぐちゃで。
自分の気持ちを隠そうとした結果、今のセレストになったんだ。
「カノンを救えたらよかったのにね。きっとエクラも悲しんだことだと思う」
「そういえば、クラはセレストがカノンを殺したって言ってた。それはどうして?クラは真実を知らないの?」
セレストは首をふった。
「クラは目の前で見てたよ。でも、ボクが記憶を書き換えたんだ。ボクを恨んでくれたらいいって思ったから」
セレストは昔の私に似てるのかも。
人間が嫌いなくせに、信じたくなる。
全部自分のせいにすれば楽になれるって勘違いしてる。
「そんなのおかしいよ」
私はいつのまにかそう言っていた。
「セレストを恨む必要ないでしょ?それにね、セレストの気持ちはよくわかるの。クラを大切に思ってくれてたんだよね。人間を信じたいって、心のどこかでは思ってたんだよね」
セレストは何も言わず、ただ私を見つめていた。
「私は人間が嫌い。人間は自己中心的で、私達を理不尽に傷つけてのしあがる。許されたことじゃないよ。でも、そうじゃない人だっているの」
「そんなのわかってるよ、ボクだって。でも、やっぱり信じられないんだ…!ヒメアにはわからないよ、信じた人間に裏切られた気持ちが」
やっぱり、セレストは人間を信じたかったんだ。
私も同じ。
「わかるよ。私もずっと信じてた人間に裏切られたの。ううん、違うよね。最初から私達を信じていなかったんだよね。でもね、やっぱりそうじゃない人間もいるよ。私はソラもスイもクラも…みんな大好きなの。もちろん、セレストもだよ」
私はセレストに向かって微笑んだ。
セレストにはカノンの姿が見えていた。
『人間にも悪い人、いい人がいるんだよ。私はクラもセレもセラもみんな大好き。大好きな人には幸せになってほしいの』
そう笑ったカノンはこの世にはもういない。
ただ——。
「本当に似てるや。君はきっとカノンの生まれ変わりかなにかだね」
セレストの中で、何かが動いた夜だった。
「暴走…?」
「そうだよ。ボク達三大能力者は大きな力を抑えるために、精神を保たなきゃいけないんだ。でも、ボクは怒りによって能力を抑えられなくなったんだよ。ヒメアもそういう経験ない?」
そう言われて、私は記憶をたどってみる。
そういえば、この前海が荒れたって新聞が王宮にも届いてたっけ。
地震も起きていないのに津波のようになったって。
あの日私はお父様にしかられて、ずいぶんと落ちこんでいたはず。
「ある…かも」
「でしょ?自然はボク達に影響されちゃうんだ。あの日もありえないくらい空が荒れたんだよ」
「天竜だから…?」
私がそう聞くと、セレストはまた悲しそうに笑った。
「そうかもね。でもね、ボクを止めてくれた人がいたんだ。それがカノンだよ。ボク達に寿命がないのは知ってるでしょ?」
「うん、知ってるよ」
「ボク達には寿命がないかわりに、能力の限界があるんだよ」
「能力の限界?」
私は首をかしげる。
すると、セレストはゆっくりとうなずいた。
「能力の限界に達したら、ボク達は自然に帰ることになる」
「そ、それって…」
嫌な予感がした。
もし、能力の限界まで使ってしまったら…死ぬってこと?
「死ぬことになるんだよ」
「っ…!!」
やっぱり、そうなんだ。
寿命がない初代人魚が死んだ理由、それは能力を使い過ぎたからなんだ。
「カノンはボクが死ぬのが嫌だったんだって。それで、ボクの暴走を自分の限界が超えてでも抑えようとした。その結果、カノンは海に帰ってしまったんだ」
今、なんとなくわかった気がする。
後悔、してるんだ…。
自分のせいでカノンは死んだんだって、後悔と悲しみでぐちゃぐちゃで。
自分の気持ちを隠そうとした結果、今のセレストになったんだ。
「カノンを救えたらよかったのにね。きっとエクラも悲しんだことだと思う」
「そういえば、クラはセレストがカノンを殺したって言ってた。それはどうして?クラは真実を知らないの?」
セレストは首をふった。
「クラは目の前で見てたよ。でも、ボクが記憶を書き換えたんだ。ボクを恨んでくれたらいいって思ったから」
セレストは昔の私に似てるのかも。
人間が嫌いなくせに、信じたくなる。
全部自分のせいにすれば楽になれるって勘違いしてる。
「そんなのおかしいよ」
私はいつのまにかそう言っていた。
「セレストを恨む必要ないでしょ?それにね、セレストの気持ちはよくわかるの。クラを大切に思ってくれてたんだよね。人間を信じたいって、心のどこかでは思ってたんだよね」
セレストは何も言わず、ただ私を見つめていた。
「私は人間が嫌い。人間は自己中心的で、私達を理不尽に傷つけてのしあがる。許されたことじゃないよ。でも、そうじゃない人だっているの」
「そんなのわかってるよ、ボクだって。でも、やっぱり信じられないんだ…!ヒメアにはわからないよ、信じた人間に裏切られた気持ちが」
やっぱり、セレストは人間を信じたかったんだ。
私も同じ。
「わかるよ。私もずっと信じてた人間に裏切られたの。ううん、違うよね。最初から私達を信じていなかったんだよね。でもね、やっぱりそうじゃない人間もいるよ。私はソラもスイもクラも…みんな大好きなの。もちろん、セレストもだよ」
私はセレストに向かって微笑んだ。
セレストにはカノンの姿が見えていた。
『人間にも悪い人、いい人がいるんだよ。私はクラもセレもセラもみんな大好き。大好きな人には幸せになってほしいの』
そう笑ったカノンはこの世にはもういない。
ただ——。
「本当に似てるや。君はきっとカノンの生まれ変わりかなにかだね」
セレストの中で、何かが動いた夜だった。

